冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
『記事はご覧になっていただけましたね』


女性だ。やっぱりお見合いの相手が仕組んだことだったのだ。了は冷静に「ええ」と答えた。


「どちらさまか、お聞きしても?」

『お心当たりがありそうなお声ですから、名乗るのは控えます』

「こういうことは、これきりで終わりにしていただけると思っていいでしょうか」


電話の相手は楽しげに『どうかしら』と笑った。たぶん私と同世代。性格はともかく、育ちはよさそうだ。この時代にお見合いをするくらいだから、当然か。

了は尊敬に値する落ち着きを見せ、ひとつ息をついた。


「こんなことを続けても、僕はあなたの思いどおりにはなりませんよ」

『あなたはそうでしょうね』


……ん? 了と一緒に、私も眉をひそめた。そしてはっと気づいた。


「それはどういう……」

「お久しぶりね、お元気そうでなにより」


了の言葉を遮って、突然挨拶をした私に、速水社長も了も驚きを見せた。私は呆然としている了の手から携帯を取り、スピーカー設定にしてテーブルに置く。

そして反応を待った。


『……いやだ、あなたもいたの』


引っかかった! 思わずぐっとこぶしを握った。


「いちゃ悪い?」

『まだ了さんにまとわりついてるのね。女の恥さらしが』


室内に緊張が走る。恥さらしというのがなにを指しているのか、わからないでもないが、向こうに語らせてみることにした。


「私は少なくとも、あなたみたいに意図的に人の名誉を傷つけたりしてない」

『未婚で子どもを産むような女に、潔癖ぶったこと言われたくないわ!』
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