冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
やっぱりそこか。


「おい……!」


反論しようと口を開いた了を押しのけた。


「なにに噛みつきたいのか知らないけど、そうやってマウンティングしてるかぎり、幸せは来ないわよ。マウントってね、相手に馬乗りになってるだけで、あなた自身は前にも上にも進んでないの。想像してみなさい」

『偉そうに……!』


憎々しげに吐き捨てて、通話は終わった。ふうっと息をつき、背もたれに身体を沈める。了が私の手を優しく叩いた。


「すごいな。かっこよかったよ」

「これでも長年、女の世界でやってきたもの」

「伊丹さんと面識のある方だったというわけなの?」


目を丸くしている速水社長に、私は首を振った。


「いいえ、ハッタリというか、カマをかけたら向こうがかかっただけです」

「あれ、ハッタリだったのか!」


今度は了にうなずいてみせた。


「なんでカマをかけようと思ったんだ。なにか気づいた?」

「あの記事の狙いがわかったの。あれはあなたを貶めたかったわけじゃない。私に、あなたと別れたくなるよう仕向けたかったんだと思う」

「早織に?」

「というか、あなたが結婚しようとしてる相手にね」


なるほどね、と速水社長が腕を組む。


「婚約発表もしていない狭間さんと伊丹さんの関係を知ってる人はそんなにいない。そこにきて、すっぱ抜きの相手がSelfishの専属モデル……」

「調べあげてそこに達したのかとも思ったんですが、電話の声を聞いてるうちに、むしろもとから私を知っていた人という印象を受けて」
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