冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
いつもなら先に恵の食事を済ますのだけれど、寝室をのぞいたところぐっすりだったので、今日はこのまま寝かせておくことにした。


「このお皿、一緒に買ったんだよね」


大きな四人掛けのダイニングテーブルで、向かい合って食事をする。サラダとシチューとバゲット。了が言ったのは、きれいなスープボウルのことだ。

ふとふたりで立ち寄った店で見つけ、ふたりとも気に入り、それぞれ色違いを買った。使ったのは久しぶりだ。アパート生活では、恵が落として割ったりしないよう、陶磁器やガラス製の食器はしまい込んだままだった。


「まさかふたつが合流する日が来るとはね」

「俺は思ってたよ」


バゲットをスープに浸しながら、しれっと言う。「あらそう」となんでもないふりを装いつつ、耳が熱くなってくるのを感じた。

テレビの音も音楽も流れていない、静かな時間。大人ふたりで、ゆっくりとる食事。なんて贅沢なんだろう。


「恵の名前、どういう意味を込めたの」


了がふいに尋ねた。私は破裂しそうに大きくなったお腹にふうふう言いながら、まこちゃんと頭を悩ませた日々を思い出した。


「そのままよ。人に多くを恵むことのできる人になりますようにって」

「恵まれるんじゃなくて?」

「それも込めたけど。メインは恵むほう。そのほうが心が豊かになるでしょ」


シチューは野菜も鶏肉もほろりと柔らかく、いい出来だ。恵のぶんもとっておこう。了もおいしそうに食べている。スプーンを手に、にこっと微笑んだ。


「いい名前だね」

「まこちゃんも知らない裏話を教えてあげましょうか」

「知りたい、なに?」
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