冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
涼しげな瞳が興味に輝く。私は反応を見逃さないよう見つめ返した。
「漢字一文字にしたのは、了と揃えたかったからなの」
慌ててティッシュに手を伸ばすはめになった。「泣かないでよ」と目元を拭ってやると「泣いてないよ」と涙声で反論がくる。
「感動して、後悔してるだけ。なんでもっとがんばらなかったかなあ、俺……」
「くよくよしないでよ。十分がんばってくれたから」
「産まれたての恵とか、大きなお腹とか見たかった……」
「産まれてから半年くらいなんて、地獄のように忙しくて疲労困憊で、私だって記憶なんかないわよ。写真はたっぷり見せたでしょ」
「見たけど、恵の写真ばっかり。なんで早織の写真がないの?」
「自撮りの趣味なんかないし、産前産後なんて、間違っても記録に残したくないようなクオリティだからよ。3キロの生命体を体内で育ててるのよ、こっちは全部吸い取られてボロボロよ」
妊娠中の女性が幸せいっぱいだという世間のイメージはいったいなんなのか。初期はお腹を守るのに神経をすり減らし、臨月になれば横になっても縦になっても身体は休まらない。常に内臓を圧迫され、なにかを呪いたくなる日々だというのに。
了は「それでも見たかったよ」とふくれる。まあ、その気持ちもわかる。
「了、じつは泣き虫だったの?」
「子どもって尊くて泣けるよ。今日も恵が夢中で遊んでるのを見てただけで泣きそうになった」
「おじさんよ、それ」
「おじさんだよ、もう三十二だよ」
了が三十二歳か! もちろん知ってはいたものの、あらためて言われると驚く。だってふたりで会っていた当時は、二十代だったのだ。
それを言うなら私も、同じだけ歳を重ね、三十代が目前なのだけれど。
すんと鼻をすすり、了が赤くなった目をこすった。
「入籍したら、恵とお風呂に入るんだ」
「今だって入っていいって言ってるのに」
「漢字一文字にしたのは、了と揃えたかったからなの」
慌ててティッシュに手を伸ばすはめになった。「泣かないでよ」と目元を拭ってやると「泣いてないよ」と涙声で反論がくる。
「感動して、後悔してるだけ。なんでもっとがんばらなかったかなあ、俺……」
「くよくよしないでよ。十分がんばってくれたから」
「産まれたての恵とか、大きなお腹とか見たかった……」
「産まれてから半年くらいなんて、地獄のように忙しくて疲労困憊で、私だって記憶なんかないわよ。写真はたっぷり見せたでしょ」
「見たけど、恵の写真ばっかり。なんで早織の写真がないの?」
「自撮りの趣味なんかないし、産前産後なんて、間違っても記録に残したくないようなクオリティだからよ。3キロの生命体を体内で育ててるのよ、こっちは全部吸い取られてボロボロよ」
妊娠中の女性が幸せいっぱいだという世間のイメージはいったいなんなのか。初期はお腹を守るのに神経をすり減らし、臨月になれば横になっても縦になっても身体は休まらない。常に内臓を圧迫され、なにかを呪いたくなる日々だというのに。
了は「それでも見たかったよ」とふくれる。まあ、その気持ちもわかる。
「了、じつは泣き虫だったの?」
「子どもって尊くて泣けるよ。今日も恵が夢中で遊んでるのを見てただけで泣きそうになった」
「おじさんよ、それ」
「おじさんだよ、もう三十二だよ」
了が三十二歳か! もちろん知ってはいたものの、あらためて言われると驚く。だってふたりで会っていた当時は、二十代だったのだ。
それを言うなら私も、同じだけ歳を重ね、三十代が目前なのだけれど。
すんと鼻をすすり、了が赤くなった目をこすった。
「入籍したら、恵とお風呂に入るんだ」
「今だって入っていいって言ってるのに」