争いの跡に
会議も終わり、会議室から出て来たオリビアとシェリル、リアムにそして死にかけのチェイス。
「ふぁあああ。まだ、引きずってるの?キ、ス」
「いやぁぁぁぁああっ!!!やめろ、オリビアっ!!もともと言えば、お前が俺の逃走を邪魔しなければ生き延びれたのにっ!!!」
大欠伸をしていたオリビアに、魂が抜けていたチェイスが地獄の底から蘇ってきた。
「先にこっちを見捨てて逃げようとしたのは、チェイスですぅ~」
「ったりめえだろ!?あんなヤツらに構ってたら、唇がいくつあっても・・・・あぁぁぁあぁぁ」
自分で言って自分で思い出してしまったのか、床に倒れこむチェイス。
「邪魔」
どけっ。と、チェイスを足蹴にする。
「もう、オリビアっ!!考えてみて?チェイスくんの気持ちを!!好きでもない男性にキスをされたのよっ!?その気持ちを考えてあげてっ!」
「リルちゃん・・・地味に傷を抉るのやめてくれる?」
今にも泣き出しそうなチェイスと、先程から笑いを堪えているリアム。
「先生っ!!シェリルさんが、チェイスくんを泣かしました~」
「はい、シェリルさん。あとで、職員室に来てください」
「ええぇ!?」
このやり取りが、四人にとってこの時間が笑って遊んで時に泣いてまた笑うこの瞬間が宝物なのだ。
その時だった。宝物にヒビが入ったのは・・・。
「よぉ、リアムじゃねえか」
リアムの背後から聞き慣れない声が聞こえてきた。彼の名前は、ギルバート。魔の国の唯一少ない人間で、リアムの旧友。リアムに負けず劣らずの武闘家。彼の決め台詞は『狙った獲物は逃さない』だ。
「ギルバート。あなたも会議に出席していたんですか?」
「おうよ。で?そちらの次期女王さまにお尋ねしたいことがありまして・・・」
「次期女王お二人いますが、どちらの女王に致します?」
チェイスの言葉に、ギルバートはオリビアの前に片膝を床につき手を取りまるで、プロポーズでもするかのようだった。
「なに」
「お初にお目見えします。私、ギルバート=レイングと申します。今日から、アナタのフィアンセになりました」
「は?」
青い長い髪をなびかせる。
「では・・・まず、挨拶代わりに甘い口付けを・・・」
「ちょっ!!ギルバートっ!!」
慌てて、リアムが間に入ろうとするがオリビアのピンヒールの踵落としの方が早かった。
「チェイス、これどーいうこと?」
「あーーーっ。そういえば、なんか魔王が年頃になっても良い相手を連れてこないオリビアのことを心配して、誰か適当な強そうな奴オリビアにって言われてたようn・・・顔が怖い、顔が近いっ!!!!」
まるで、テレビから出てきそうな幽霊の顔で、いい加減な仕事しかしないチェイスを睨みつけるオリビア。
「先生、いいの?」
「なにがです?」
「オリビアの婚約者だよ?」
「私にとってのオリビアちゃんは、生徒以外の何者でもありません」
「ふぅん・・・」
しかし、シェリルにはしっかりと分かっていた彼の瞳にはオリビアしか写っていないことに。