Monkey-puzzle
◇◇
二者択一だったと思う。
最後まで強引に口説くか、身を引くか。
仕事終わりにかかって来た木元さんからの連絡の後、車に乗り込んですぐに入った恭介からのメッセージ。
『智ちゃんは真理さんが担当外された本当の理由聞いた?』
三課では無いけれどあの会社の中に何人か親しくしているヤツがいて聞いてみたけど、どうやら、社内の秘密…というか、木元さんが所属してる課内の中でのシークレット的扱いだったらしくて、他の課のヤツは「え?」って感じだった。
で、聞き出すのに少し時間はかかったけど、何とか本当の理由をさぐりだせて。
変な噂流す人が居るんだなって苦笑い。
だって、木元さんの働きぶり見てれば分かるだろ。どう考えても枕するまでもなくあの人に仕事を頼みたい人はわんさか居る。
まあ、でも木元さんの相手に選ばれたって事は光栄だけど。
恭介に『聞いてる』と返信をしたら、またすぐにレス。
『どうやって知ったの?』
『色々、裏から手を回した。課内機密なんでしょ?』
『うん。オフレコ。』
やっぱそうだったんだ。
『情報ありがと、智ちゃん。
今日、帰りにメールを流した張本人と話したいから、真理さんを頼める?』
思わずスマホ画面を見て眉間に皺を寄せた。
『大丈夫なの?それ。危なくない?』
『別にどうしようってワケじゃなくて、事の次第を確かめたいだけだから。
真理さんには内緒で。』
恭介の中で予想がついているだけで、その人で確定とまではいかないのかもな。だからこその『木元さんには内緒』。
当事者だからいつか判明したら知った方がいいかもだけど。知らせるには『時期尚早』ってヤツなのかも。
じゃあ、まあそこは恭介の思う様にしたらいいし、俺も協力出来るならするけどさ…木元さんを俺に頼んでいいのか?あいつ。
そこまで木元さんの為に動くって事は相当惚れ込んでるってことじゃないの?
それに多分、俺が木元さんを気に入ってるのは知ってるはずだよな。
口説くとか思わねーのかな…
『あくまで送るだけでよろしく』
…俺の声、聞こえた?
『言っとくけど、相手が智ちゃんでも真理さんに何かしたら呪い殺すよ』
恐っ!
なんだよ、『呪い殺す』って!
冗談って言うのは分かってるよ?
でもさ…『(笑)』とかも無く、絵文字も無く、文章だけだから恐いって!
なんて心の中で文句をつけながらも頬が緩んでいる自分に気が付いて、口元を抑えた。
『智ちゃん、よろしくお願いします』
「……。」
…昔から、俺は恭介のおねだりとかお願いとかにやたら弱かった。
どういうわけかよく奢らされてたし、気が付いたら一週間くらい俺のアパートに恭介が転がり込んでいたり…。
それも加味して、まあ…仕方ねーかな、木元さんの事は。
最初に三人で会った時に、そう言う事かとちょっと思ってはいたんだよ。
言い合いしている二人の醸し出している雰囲気を見て…『惹かれ合っているのかな』って。
『了解』
いい子にスタンプを押して。助手席にスマホを投げると車を発進させた。
まあでも、勝手だけど少しは腹いせさせて貰おうかな。
そんな下心ありありの夕飯後の帰り道。
結局、ほっぺにチューどまりと言う、残念ぶりで。
それだって、俺的には相当頑張ったよ?
だってさ…触れようとすると、思い出すんだよ。
『呪い殺すよ』
俺の中で恭介の存在、半端ねえわ、マジで。
木元さんを送り届けた後、恭介に『無事送り届けた』とメッセを送って、『近々飲もうぜ。恭介の奢り』と付け加えた。
『ゴチになります!イケメン調香師!』
…俺が奢って貰うつってんじゃん
苦笑いながらもまた頬が勝手に緩む。
まあ…いいや。
ほっぺにチューは秘密にしとこう。
その位は、許してよ?恭介。
二者択一だったと思う。
最後まで強引に口説くか、身を引くか。
仕事終わりにかかって来た木元さんからの連絡の後、車に乗り込んですぐに入った恭介からのメッセージ。
『智ちゃんは真理さんが担当外された本当の理由聞いた?』
三課では無いけれどあの会社の中に何人か親しくしているヤツがいて聞いてみたけど、どうやら、社内の秘密…というか、木元さんが所属してる課内の中でのシークレット的扱いだったらしくて、他の課のヤツは「え?」って感じだった。
で、聞き出すのに少し時間はかかったけど、何とか本当の理由をさぐりだせて。
変な噂流す人が居るんだなって苦笑い。
だって、木元さんの働きぶり見てれば分かるだろ。どう考えても枕するまでもなくあの人に仕事を頼みたい人はわんさか居る。
まあ、でも木元さんの相手に選ばれたって事は光栄だけど。
恭介に『聞いてる』と返信をしたら、またすぐにレス。
『どうやって知ったの?』
『色々、裏から手を回した。課内機密なんでしょ?』
『うん。オフレコ。』
やっぱそうだったんだ。
『情報ありがと、智ちゃん。
今日、帰りにメールを流した張本人と話したいから、真理さんを頼める?』
思わずスマホ画面を見て眉間に皺を寄せた。
『大丈夫なの?それ。危なくない?』
『別にどうしようってワケじゃなくて、事の次第を確かめたいだけだから。
真理さんには内緒で。』
恭介の中で予想がついているだけで、その人で確定とまではいかないのかもな。だからこその『木元さんには内緒』。
当事者だからいつか判明したら知った方がいいかもだけど。知らせるには『時期尚早』ってヤツなのかも。
じゃあ、まあそこは恭介の思う様にしたらいいし、俺も協力出来るならするけどさ…木元さんを俺に頼んでいいのか?あいつ。
そこまで木元さんの為に動くって事は相当惚れ込んでるってことじゃないの?
それに多分、俺が木元さんを気に入ってるのは知ってるはずだよな。
口説くとか思わねーのかな…
『あくまで送るだけでよろしく』
…俺の声、聞こえた?
『言っとくけど、相手が智ちゃんでも真理さんに何かしたら呪い殺すよ』
恐っ!
なんだよ、『呪い殺す』って!
冗談って言うのは分かってるよ?
でもさ…『(笑)』とかも無く、絵文字も無く、文章だけだから恐いって!
なんて心の中で文句をつけながらも頬が緩んでいる自分に気が付いて、口元を抑えた。
『智ちゃん、よろしくお願いします』
「……。」
…昔から、俺は恭介のおねだりとかお願いとかにやたら弱かった。
どういうわけかよく奢らされてたし、気が付いたら一週間くらい俺のアパートに恭介が転がり込んでいたり…。
それも加味して、まあ…仕方ねーかな、木元さんの事は。
最初に三人で会った時に、そう言う事かとちょっと思ってはいたんだよ。
言い合いしている二人の醸し出している雰囲気を見て…『惹かれ合っているのかな』って。
『了解』
いい子にスタンプを押して。助手席にスマホを投げると車を発進させた。
まあでも、勝手だけど少しは腹いせさせて貰おうかな。
そんな下心ありありの夕飯後の帰り道。
結局、ほっぺにチューどまりと言う、残念ぶりで。
それだって、俺的には相当頑張ったよ?
だってさ…触れようとすると、思い出すんだよ。
『呪い殺すよ』
俺の中で恭介の存在、半端ねえわ、マジで。
木元さんを送り届けた後、恭介に『無事送り届けた』とメッセを送って、『近々飲もうぜ。恭介の奢り』と付け加えた。
『ゴチになります!イケメン調香師!』
…俺が奢って貰うつってんじゃん
苦笑いながらもまた頬が勝手に緩む。
まあ…いいや。
ほっぺにチューは秘密にしとこう。
その位は、許してよ?恭介。