Monkey-puzzle
◇◇
夜中の雨が嘘みたいに晴れ渡った朝。
どこまでも続く青空に“あの日”の真理さんを思い出す。
『気にしないで?この世の中、持ちつ持たれつ。困った時はお互い様だよ?』
後ろから照らす日の光が、真理さんの笑顔に重なって一瞬にして虜になった。
あれからもう随分経った。けれど、全く褪せない記憶。
会社の最寄り駅の改札を出たら、丁度思い出していた人の後ろ姿が視界にはいった。
思わず緩んだ頬を慌てて腕で覆って隠す。
俺のあげた靴…履いてる。
そう思った時には駆け出して、左手を捕らえてた。
路地裏に押し込んで、奪った唇。
柔らかくて、甘くて身体の奥が欲を膨らませる。
下唇を何度が挟み込む様に味わってそれから舌を絡めた。
…このままずっと俺の腕ん中に居てくれたら良いのにね。
俺の突然の行動に、瞳を潤ませて困り顔をしている真理さんに、安らぎを朝からどうも、なんて上機嫌で路地から大通りに出たら…田所さんが登場。
「お話を聞いてくれませんか!」
いつか接触してくると思ってはいたけど、予想よりだいぶ早かった。
警戒の色を濃く出す俺を仲裁に入ってたしなめる真理さん。
アポも取らないで相手の都合も考えずに、公衆の面前で大声で謝罪なんて明らかに非常識なのに、失礼な態度とっている俺の代わりに丁寧に詫る。
事情は分からないにしても絶対に相手は無下にしない。
そうだよ、真理さんはこういう人。
どんなに相手に非があったとしても、絶対にクライアントを無下にはしない。
凄いと思うよ?
思うんだけどさ…この人、あなたから『香りのワークショップ』奪った張本人だよ?
いや、それは仕方ない。知らないんだからと諦め半分で、「あ~もう」と呟いた。
せめて真田さんと先に話させて貰おう。
あまり田所さんと二人きりにはしたくなかったけど、悪口メールを送るなんて姑息な手段で嫌がらせをしたんだし、こんな公衆の面前で何かを仕掛けるなんて事はしないはず。
そう踏んで一足先に会社へと向かった。
三課に入って行くと、真田さんは課長席で高橋と談笑中。
「ああ、渋谷おはよう!」
…爽やかに挨拶してんじゃないよ。
俺と一回対峙してるくせにさ。
と言う悪態を心ん中だけで吐き捨てて「おはようございます」と笑顔で返した。
外回りの件の調整と田所さんの話をと課長席に進み出ると、俺が言い出す前に真田さんが口を開く。
「今日の外回り、一時間遅れになったから。」
思わず笑顔を崩してしまう。
…田所さんが来るのをわかってるな。
と言うよりも、二人で示し合わせたのかもしれない。
クライアントである田所さんを無下には出来ないと言う体裁があれば、外回りを調整しても名目が立つ。
とんだ課長さんだわ。
私事を持ち込むなよ、業務に。
だけど、話したかった俺には願ったり叶ったりかもしれない。
「課長、お話があります。今よろしいですか。」
「おう、いいよ。」
変わらず余裕の笑みを浮かべる真田さんに警戒の色が濃くなる。
事の事態を知っても尚、この余裕…何故?
夜中の雨が嘘みたいに晴れ渡った朝。
どこまでも続く青空に“あの日”の真理さんを思い出す。
『気にしないで?この世の中、持ちつ持たれつ。困った時はお互い様だよ?』
後ろから照らす日の光が、真理さんの笑顔に重なって一瞬にして虜になった。
あれからもう随分経った。けれど、全く褪せない記憶。
会社の最寄り駅の改札を出たら、丁度思い出していた人の後ろ姿が視界にはいった。
思わず緩んだ頬を慌てて腕で覆って隠す。
俺のあげた靴…履いてる。
そう思った時には駆け出して、左手を捕らえてた。
路地裏に押し込んで、奪った唇。
柔らかくて、甘くて身体の奥が欲を膨らませる。
下唇を何度が挟み込む様に味わってそれから舌を絡めた。
…このままずっと俺の腕ん中に居てくれたら良いのにね。
俺の突然の行動に、瞳を潤ませて困り顔をしている真理さんに、安らぎを朝からどうも、なんて上機嫌で路地から大通りに出たら…田所さんが登場。
「お話を聞いてくれませんか!」
いつか接触してくると思ってはいたけど、予想よりだいぶ早かった。
警戒の色を濃く出す俺を仲裁に入ってたしなめる真理さん。
アポも取らないで相手の都合も考えずに、公衆の面前で大声で謝罪なんて明らかに非常識なのに、失礼な態度とっている俺の代わりに丁寧に詫る。
事情は分からないにしても絶対に相手は無下にしない。
そうだよ、真理さんはこういう人。
どんなに相手に非があったとしても、絶対にクライアントを無下にはしない。
凄いと思うよ?
思うんだけどさ…この人、あなたから『香りのワークショップ』奪った張本人だよ?
いや、それは仕方ない。知らないんだからと諦め半分で、「あ~もう」と呟いた。
せめて真田さんと先に話させて貰おう。
あまり田所さんと二人きりにはしたくなかったけど、悪口メールを送るなんて姑息な手段で嫌がらせをしたんだし、こんな公衆の面前で何かを仕掛けるなんて事はしないはず。
そう踏んで一足先に会社へと向かった。
三課に入って行くと、真田さんは課長席で高橋と談笑中。
「ああ、渋谷おはよう!」
…爽やかに挨拶してんじゃないよ。
俺と一回対峙してるくせにさ。
と言う悪態を心ん中だけで吐き捨てて「おはようございます」と笑顔で返した。
外回りの件の調整と田所さんの話をと課長席に進み出ると、俺が言い出す前に真田さんが口を開く。
「今日の外回り、一時間遅れになったから。」
思わず笑顔を崩してしまう。
…田所さんが来るのをわかってるな。
と言うよりも、二人で示し合わせたのかもしれない。
クライアントである田所さんを無下には出来ないと言う体裁があれば、外回りを調整しても名目が立つ。
とんだ課長さんだわ。
私事を持ち込むなよ、業務に。
だけど、話したかった俺には願ったり叶ったりかもしれない。
「課長、お話があります。今よろしいですか。」
「おう、いいよ。」
変わらず余裕の笑みを浮かべる真田さんに警戒の色が濃くなる。
事の事態を知っても尚、この余裕…何故?