Monkey-puzzle
「大丈夫…です。」
ぶつかった視線を外せなかった。
いや…多分、外したくなかったんだって思う。
「本当に?良かった!」
無邪気に喜ぶその人を目の前に、思った。
ああ…そうか。
わかった気がする。
今までの俺の道のりって全部、この人に出会う為だったんだ…。
再び駅へ戻りタクシーをつかまえてくれたその人は、俺が乗り込んだ後、タクシー代を差し出した。
「ごめん!私、ケチだからさ、タダとは言わない!」
戸惑いながら返そうとする俺に笑いながら名刺も差し出す。
「あなたが出世したら、100倍にして返して!」
本来だったら無理に突き返していたであろうタクシー代。けれど名刺欲しさに受け取ったあの時。
「木元真理子…さん。」
後日調べてみたら、アルヴォイ企画はイベント業界の会社としては大きい方だった。
しかも、新卒採用の時期、過ぎていたし。
だけど…あの人ともう一度関わるチャンスはあるはず。
意を決して、セクハラな先輩とは縁を切り、必死で就職活動をした結果、小さいながらも別のイベント系の会社に勤務出来て。
中途採用の募集や知り合いになった人のコネで、なんとかアルヴォイ企画に再就職出来た。
真理さんに再会したのは新人研修の時。
思い出して貰おうと話しかけたのは良かったんだけど。普通に『あの時はありがとうございました』じゃ無くて…もっと近づけるように。そんな欲が出た。
「覚えてない?俺の事。」
「…悪いけど、仕事出来ないヤツに興味はない。
大体この班、やれって言った事、出来て無いじゃない!仕事もできないくせに、口説いてんじゃない!」
…爽やかな程、スパッとしていて凛とした物言い。
怒ってはいるけれど、変わらないのがやけに嬉しくて怒られたのに、笑う俺。
隣で同じく中途採用で研修受けていた樹が驚きつつも興味津々だったのを覚えてる。
この人、本当に実直で真面目なんだ、きっと。
人に厳しいからこそ、ここぞの時に優しくなれる。
たぶん『誰だから』とか無く、目の前でたまたま俺が苦しがってたから、助けた、それだけ。
モテんだろうな…なんて覚悟していたのに、現状はそれとは真逆で
真田って彼氏は居たけど、他の社員からは『キツい』『恐い』『近寄れない』と恐れられていて。
もしかしてあの人の本当の優しさ知ってるの俺だけ?
なんて、ちょっと湧いた優越感も、いや、さすがに付き合ってるんだから彼氏は知ってるか、と少しがっかりしたりして。
知れば知る程、距離が近づけば近づく程、憧れだったはずの気持ちに、感情が交じって行く。
思えばそれが自然な流れだったのかも知れないけれど、いつの間にか集まった想いはやがて大きな湖を生み出して、欲を持った。
“真理さんと一緒に居たい”
ぶつかった視線を外せなかった。
いや…多分、外したくなかったんだって思う。
「本当に?良かった!」
無邪気に喜ぶその人を目の前に、思った。
ああ…そうか。
わかった気がする。
今までの俺の道のりって全部、この人に出会う為だったんだ…。
再び駅へ戻りタクシーをつかまえてくれたその人は、俺が乗り込んだ後、タクシー代を差し出した。
「ごめん!私、ケチだからさ、タダとは言わない!」
戸惑いながら返そうとする俺に笑いながら名刺も差し出す。
「あなたが出世したら、100倍にして返して!」
本来だったら無理に突き返していたであろうタクシー代。けれど名刺欲しさに受け取ったあの時。
「木元真理子…さん。」
後日調べてみたら、アルヴォイ企画はイベント業界の会社としては大きい方だった。
しかも、新卒採用の時期、過ぎていたし。
だけど…あの人ともう一度関わるチャンスはあるはず。
意を決して、セクハラな先輩とは縁を切り、必死で就職活動をした結果、小さいながらも別のイベント系の会社に勤務出来て。
中途採用の募集や知り合いになった人のコネで、なんとかアルヴォイ企画に再就職出来た。
真理さんに再会したのは新人研修の時。
思い出して貰おうと話しかけたのは良かったんだけど。普通に『あの時はありがとうございました』じゃ無くて…もっと近づけるように。そんな欲が出た。
「覚えてない?俺の事。」
「…悪いけど、仕事出来ないヤツに興味はない。
大体この班、やれって言った事、出来て無いじゃない!仕事もできないくせに、口説いてんじゃない!」
…爽やかな程、スパッとしていて凛とした物言い。
怒ってはいるけれど、変わらないのがやけに嬉しくて怒られたのに、笑う俺。
隣で同じく中途採用で研修受けていた樹が驚きつつも興味津々だったのを覚えてる。
この人、本当に実直で真面目なんだ、きっと。
人に厳しいからこそ、ここぞの時に優しくなれる。
たぶん『誰だから』とか無く、目の前でたまたま俺が苦しがってたから、助けた、それだけ。
モテんだろうな…なんて覚悟していたのに、現状はそれとは真逆で
真田って彼氏は居たけど、他の社員からは『キツい』『恐い』『近寄れない』と恐れられていて。
もしかしてあの人の本当の優しさ知ってるの俺だけ?
なんて、ちょっと湧いた優越感も、いや、さすがに付き合ってるんだから彼氏は知ってるか、と少しがっかりしたりして。
知れば知る程、距離が近づけば近づく程、憧れだったはずの気持ちに、感情が交じって行く。
思えばそれが自然な流れだったのかも知れないけれど、いつの間にか集まった想いはやがて大きな湖を生み出して、欲を持った。
“真理さんと一緒に居たい”