Monkey-puzzle
私の行いが予想の範疇を遥かに越えていたのか、打たれた左頬を抑えて呆然と私を見ている田所さん。
その両肩を掴んで顔を覗き込んだ。
「いい?田所さん。これは遊びじゃないの。
お金をお支払いしてくれたお客様をお招きして、ひとときでも楽しんでいただく、それが私達の仕事なの。
自分の保身や、私情を挟んだ意地を優先にするなんて絶対に許されない。」
きっと、冷静な彼女ならそれは当たり前の事だときちんと理解しているはず。
ただ今は、混乱して、見失っているだけ。
メールの件で田所さんについて思ったことがあった。
この人は、きっと目の前の状況に混乱して飲まれ易いんだって。
どんなに有能な人だって弱点はある。
田所さんは、人間関係も仕事もきちんと丁寧にこなせる人なんだって思う。たまたま、弱点がそこだったというだけ。
「田所さんは、この仕事、成功させたくないの?」
「そ、それはもちろん、させたい…。」
「だったら、プライドは捨てな。
成功させる為なら何でも利用して、何にでも土下座するくらいの覚悟で挑みなさい!」
私の勢いに気圧されながらも、田所さんの黒く深い眸が反応して揺れる。
「あなたが私を気に入らないならそれでいい。だけど仕事は別。
私は今、全力であなたに協力する。
だから、あなたはそんな私を利用すればいいの。わかる?」
ゆっくりと放った言葉に形の綺麗な唇が震えながらも少し動いた。
「どう…すればいいですか?私は。」
よし、復活した。これならいくらでも対応出来る。
「高橋から聞きいたぞ!机と椅子が確保出来ていなかったってどういう…ってあれ?」
「はっ?!真理さん?!」
田所さんに落ち着きが戻った所に入って来た亨と渋谷は私が居る事に驚いて、少しだけ困惑している。
けれど、状況判断にかけては右に出るものはいない亨と空気を読むのに長けてる渋谷だから。「偶然通りかかったの。後できちんと説明する。」と目線を合わせただけで二人とも納得して頷いた。
「とりあえず、状況の確認。
田所さん、確か2回目の打ち合わせで『机と椅子は確保できました』とおっしゃってましたよね?」
「は、はい…予定では、コンシェルジュサービスの時に使用している白い丸机とクッション性の高い椅子を出す予定だったんですが、それは用意されておらず、用意されていたのは会議に使うようなパイプ椅子と木の長机でした。」
両者を比べると、後者だとイメージも座り心地も少し良くない。
しかも、一階のホールとなると、コスメ関係が沢山入っていてオシャレに敏感な人達が行き交う場所。
そこに、会議用のパイプ椅子と木の机…はな。
「東栄デパートで貸し出しなどを統括している総務部の方には?」
「話しには行ってみたのですが、『それは知らない』の一点張りで…。」
「田所さんの上司の相澤さんは何と。」
「それが今、急なお客様の対応で席を外していまして。メールでのみ報告を入れてあります。」
なるほどね…大体状況はわかって来たかな。
「田所さん、東栄デパートは家具のお店が入っていましたね?」
「は、はい。海外の輸入のアンティーク家具の店で…」
「展示品や、もう売り場からは下げたソファやローテーブルはありますか?」
「確認してみますが…。」
「後は橘さんの到着時間だな」と時計を確認する私の考えがいまいち理解出来ないのか、田所さんが小首を傾げて同じく不思議そうな亨や高橋と顔を合わせる。
一番後ろで壁にもたれ腕組みをして話しを聞いていた渋谷だけが、ニヤリと口角をあげた。
「なるほど、その手があったね。橘さんに選んで貰えれば、寧ろ雰囲気良くなるんじゃない?」
私の目論見をちゃんと理解してる…。さすがは渋谷。
その両肩を掴んで顔を覗き込んだ。
「いい?田所さん。これは遊びじゃないの。
お金をお支払いしてくれたお客様をお招きして、ひとときでも楽しんでいただく、それが私達の仕事なの。
自分の保身や、私情を挟んだ意地を優先にするなんて絶対に許されない。」
きっと、冷静な彼女ならそれは当たり前の事だときちんと理解しているはず。
ただ今は、混乱して、見失っているだけ。
メールの件で田所さんについて思ったことがあった。
この人は、きっと目の前の状況に混乱して飲まれ易いんだって。
どんなに有能な人だって弱点はある。
田所さんは、人間関係も仕事もきちんと丁寧にこなせる人なんだって思う。たまたま、弱点がそこだったというだけ。
「田所さんは、この仕事、成功させたくないの?」
「そ、それはもちろん、させたい…。」
「だったら、プライドは捨てな。
成功させる為なら何でも利用して、何にでも土下座するくらいの覚悟で挑みなさい!」
私の勢いに気圧されながらも、田所さんの黒く深い眸が反応して揺れる。
「あなたが私を気に入らないならそれでいい。だけど仕事は別。
私は今、全力であなたに協力する。
だから、あなたはそんな私を利用すればいいの。わかる?」
ゆっくりと放った言葉に形の綺麗な唇が震えながらも少し動いた。
「どう…すればいいですか?私は。」
よし、復活した。これならいくらでも対応出来る。
「高橋から聞きいたぞ!机と椅子が確保出来ていなかったってどういう…ってあれ?」
「はっ?!真理さん?!」
田所さんに落ち着きが戻った所に入って来た亨と渋谷は私が居る事に驚いて、少しだけ困惑している。
けれど、状況判断にかけては右に出るものはいない亨と空気を読むのに長けてる渋谷だから。「偶然通りかかったの。後できちんと説明する。」と目線を合わせただけで二人とも納得して頷いた。
「とりあえず、状況の確認。
田所さん、確か2回目の打ち合わせで『机と椅子は確保できました』とおっしゃってましたよね?」
「は、はい…予定では、コンシェルジュサービスの時に使用している白い丸机とクッション性の高い椅子を出す予定だったんですが、それは用意されておらず、用意されていたのは会議に使うようなパイプ椅子と木の長机でした。」
両者を比べると、後者だとイメージも座り心地も少し良くない。
しかも、一階のホールとなると、コスメ関係が沢山入っていてオシャレに敏感な人達が行き交う場所。
そこに、会議用のパイプ椅子と木の机…はな。
「東栄デパートで貸し出しなどを統括している総務部の方には?」
「話しには行ってみたのですが、『それは知らない』の一点張りで…。」
「田所さんの上司の相澤さんは何と。」
「それが今、急なお客様の対応で席を外していまして。メールでのみ報告を入れてあります。」
なるほどね…大体状況はわかって来たかな。
「田所さん、東栄デパートは家具のお店が入っていましたね?」
「は、はい。海外の輸入のアンティーク家具の店で…」
「展示品や、もう売り場からは下げたソファやローテーブルはありますか?」
「確認してみますが…。」
「後は橘さんの到着時間だな」と時計を確認する私の考えがいまいち理解出来ないのか、田所さんが小首を傾げて同じく不思議そうな亨や高橋と顔を合わせる。
一番後ろで壁にもたれ腕組みをして話しを聞いていた渋谷だけが、ニヤリと口角をあげた。
「なるほど、その手があったね。橘さんに選んで貰えれば、寧ろ雰囲気良くなるんじゃない?」
私の目論見をちゃんと理解してる…。さすがは渋谷。