Monkey-puzzle
悩みながらもミーティングルームを出て戻った三課。
高橋と渋谷が、眉間に皺を寄せて何かを話し合ってる中、他の人達はのんびりコーヒーをすすりながら談笑中だった。
まあ…昼休みだしね。良いんだけどさ…。
様子を伺いながら、自分の席に戻ると、タブレットを立ち上げる。
「俺達、今回、本当に頑張ってるよな!」
「企画も良いし。優勝できるかもよ!」
「私,今から選んでおきますね、お祝いするお店。」
「おーミヨちゃん、気が利く!」
…お気楽すぎる。
喉元から「全く持ってダメだと思う」と飛び出すのを一度は飲み込んだけれど、『企画自体は素晴らしい』と言う亨の言葉が脳裏を過って、浮かれすぎている空気に我慢が出来なくなった。
勿体ないよ。
折角金の卵を抱えているのに。
一人一人が自分に出来る事をきちんとしさえすれば、優勝出来るかもしれないのに。
それだけの力を、皆がそれぞれ持っているのに。
一度深呼吸すると、お腹に気合いを入れた。
ごめんね、渋谷…。
だけどやっぱり、私はこう言うのを見過ごせない。
「…随分、余裕そうだね、三課。」
課内の視線が、自分に集中しているのを肌で感じながら、タブレットに目を落としたまま、言葉を続ける。
とてもじゃないけど…渋谷と目を合わせられない。
「少し話が聞こえたけど、まるでなってないじゃない。
何が『優勝できるかも』よ。学芸会じゃないんだから。このまま出したら、いい恥かくだけなんじゃない?」
課内の雰囲気が明るさから一変し、張りつめた。
「な、内容も知らないくせに口出ししないでくださいよ!」
頭に血が上って食って掛かって来た白石を冷たく一瞥すると、またタブレットに目線を落とす。
目の端に一瞬映った、逸らす事無く真っすぐ私を見ている渋谷。
その視線が痛く感じて机の下の足が震えを起こし始めた。
早く…終わって、この時間。
「内容をよく知らなくたって、少し耳に入る程度の話ですらヤバいって言ってんの。」
「そ、そんなに言うなら自分はどうなんだよ。よっぽど自信があるんでしょうね。」
「もちろん。少なくともあなた達の企画なんかには絶対負けない。」
「じゃ、じゃあもし俺達に負けたら三課から出てってくださいよ!」
売り言葉に買い言葉なのか、それとも根底にそう言う願いがあったのか。それは定かではないけれど、言い放った白石の言葉に皆が同意したのは間違いない。
一人一人のつららの様な視線が一斉に私に向けられた。
「し、白石さん…それは言い過ぎ…」
言い合いの様子を狼狽しながら見ていた高橋が何とか声を絞り出す。
けれど、「高橋」と渋谷がそれを制し、私にくるりと背中を向けた。
それだけの事なのに目頭が熱くなって視界がぼやける。
「最初からそのつもりだよ。」と言い放つと足早に三課を飛び出した。
本人の機嫌を損ねておいてなんだけど…今日、渋谷から貰ったフラットシューズを履いていて良かった。
転んだら、もう多分、起き上がれない。
高橋と渋谷が、眉間に皺を寄せて何かを話し合ってる中、他の人達はのんびりコーヒーをすすりながら談笑中だった。
まあ…昼休みだしね。良いんだけどさ…。
様子を伺いながら、自分の席に戻ると、タブレットを立ち上げる。
「俺達、今回、本当に頑張ってるよな!」
「企画も良いし。優勝できるかもよ!」
「私,今から選んでおきますね、お祝いするお店。」
「おーミヨちゃん、気が利く!」
…お気楽すぎる。
喉元から「全く持ってダメだと思う」と飛び出すのを一度は飲み込んだけれど、『企画自体は素晴らしい』と言う亨の言葉が脳裏を過って、浮かれすぎている空気に我慢が出来なくなった。
勿体ないよ。
折角金の卵を抱えているのに。
一人一人が自分に出来る事をきちんとしさえすれば、優勝出来るかもしれないのに。
それだけの力を、皆がそれぞれ持っているのに。
一度深呼吸すると、お腹に気合いを入れた。
ごめんね、渋谷…。
だけどやっぱり、私はこう言うのを見過ごせない。
「…随分、余裕そうだね、三課。」
課内の視線が、自分に集中しているのを肌で感じながら、タブレットに目を落としたまま、言葉を続ける。
とてもじゃないけど…渋谷と目を合わせられない。
「少し話が聞こえたけど、まるでなってないじゃない。
何が『優勝できるかも』よ。学芸会じゃないんだから。このまま出したら、いい恥かくだけなんじゃない?」
課内の雰囲気が明るさから一変し、張りつめた。
「な、内容も知らないくせに口出ししないでくださいよ!」
頭に血が上って食って掛かって来た白石を冷たく一瞥すると、またタブレットに目線を落とす。
目の端に一瞬映った、逸らす事無く真っすぐ私を見ている渋谷。
その視線が痛く感じて机の下の足が震えを起こし始めた。
早く…終わって、この時間。
「内容をよく知らなくたって、少し耳に入る程度の話ですらヤバいって言ってんの。」
「そ、そんなに言うなら自分はどうなんだよ。よっぽど自信があるんでしょうね。」
「もちろん。少なくともあなた達の企画なんかには絶対負けない。」
「じゃ、じゃあもし俺達に負けたら三課から出てってくださいよ!」
売り言葉に買い言葉なのか、それとも根底にそう言う願いがあったのか。それは定かではないけれど、言い放った白石の言葉に皆が同意したのは間違いない。
一人一人のつららの様な視線が一斉に私に向けられた。
「し、白石さん…それは言い過ぎ…」
言い合いの様子を狼狽しながら見ていた高橋が何とか声を絞り出す。
けれど、「高橋」と渋谷がそれを制し、私にくるりと背中を向けた。
それだけの事なのに目頭が熱くなって視界がぼやける。
「最初からそのつもりだよ。」と言い放つと足早に三課を飛び出した。
本人の機嫌を損ねておいてなんだけど…今日、渋谷から貰ったフラットシューズを履いていて良かった。
転んだら、もう多分、起き上がれない。