ファンタジーのその先
ガチャッ
「やっと起きたか。お前もう遅刻寸前だぞ。」
だるそうにそう言う男。
私の幼なじみの大樹。
頼んでもないのに毎朝私を迎えに来る。
「良いじゃない。まだ寸前で遅刻じゃないんだから。」
…ったく。
いつの間にこんな可愛いげのないやつになったんだ?
小学生の頃は俺のあとにくっついてばかりいたのに…。
まぁ、そんな奈都を好きになった俺も俺だよな。
「お前また夜中に本でも読んでたんだろ?」
どーせこいつのことだからまた新しいファンタジー小説でも買ったのだろう。
「ッ!しょうがないじゃない!新しいの出てたんだから!悪い!?」
そうか…。
そうだ俺はこいつの柄にもなくファンタジーが好きなところにハマったのかも知れない。
「あたしはね、ファンタジーの夢のあるところが好きなの!!現実逃避よ!現実逃避!!」
そしてこうやってすぐ語りだす所も。
「でも、今回のはね現実性があるのよ。」
…それファンタジーじゃなくね?
「読んでると怖くなるの。本の中に引き込まれそうで…。」
そう、怖くなるの。
とても一人じゃいられなくなるくらい…。
でも読んでしまうのよ。
いつも思う『早く続きが知りたい』ではなくて『手が勝手にページをめくってしまう』…そういう感じ。
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