ファンタジーのその先
ピーンポーン
「はーい。」
「おはようございます。」
得意の営業スマイルを崩さずに言う。
「あら、大樹くん。いつもありがとうね。あのこ、まだ寝てるのよ…。ごめんだけど起こしてきてくれないかしら?まったく…パパがゴミ出し行ってくれないから。じゃあ、よろしくね!」
おばさんはぶつぶつ文句を言いながらゴミを出しに行った。
奈都の部屋は知ってる。
入るのは小学生以来かな…。
コンコン
ノックをしたが、返事がない。
まだ寝てるのか…。
「なつー。入るぞ〜。」
ガチャッ
…居ない。
居ない?
何故?
ベットの布団は整えられたまま。
人が寝た形跡はない。
…ん?
小説?
彼奴(あいつ)にしては珍しいな、本を出しっぱなしにしとくなんて…
俺はストーリーが気になり、表紙を開く。
【貴方を此の世界から連れ出してあげましょう。】
連れ出す?
俺は続きが気になりその本をカバンの中に入れた。
「あら、大樹くん。奈都は?」
ゴミ出しが終わったのかおばさんが帰ってきた。
「奈都、居ないです。布団も綺麗なままだし…」
「そうねぇ。どこに行っちゃったのかしら。」
どこに行っちゃったのかしら、ってのんきだなぁ…。
「俺、遅刻になっちゃうんで取り敢えず学校行きますね。」
「えぇ、そうね。奈都のことはパパにも相談して何とかするから大樹くんは学校いってらっしゃいな。」
笑顔で俺を送り出してくれるおばさん。
「はい。ありがとうございます。いってきます。」
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