その花が永遠に咲き続けますように
花火を見る場所に彼が選んだのは、花火の観覧者が一番集まるメインエリアではなく、そこから少し離れた場所にある、エリアとエリアを繋ぐ橋の上。
メインエリアよりは多少遠くに見えるものの、周りに人がいなくてゆっくり見えるから、とのことだった。
……私が結構疲れているから、気を遣って人が少ない場所に連れてきてくれたのかなって勝手に思った。


ドォン、ドォン……と色とりどりの花火が夜空に何発も打ち上がっていく。



「綺麗……」

思わず口から出てしまった言葉。でも本当に、こんな綺麗な空を見上げたことは、多分今までの人生で初めて。


「本当に綺麗だね……」

永君も隣で同じことを呟きながら、しばらくお互いに無言で花火を見続ける。


だけど。



「咲。今日は付き合ってくれて本当にありがとう」


突然そんなことを言われるから「え?」と聞き返してしまう。



「俺、今日凄い楽しかったよ」

「そんな……私の方こそだよ。本当に楽しかった」


良かった、と答えて笑う彼の笑顔が寂しげに見えるのはどうして?


理由はわからないけれど、少し不安な気持ちが胸の中を訪れる。



すると、花火は夜空に向かって打ち上がり続けているにもかかわらず、何故か永君は少し俯く。
花火が上がる度に彼の表情が照らされ、凄く切ない顔をしているのがわかるから胸が締め付けられたみたいに苦しくなる。


「永君?」

そっと彼の名前を呼ぶ。
彼もゆっくりと顔を上げてくれる……笑ってはいるけれど、無理して笑ってる感じが伝わってくる。



そして……



「今日咲を誘ったのはさ、咲に最初に話したかったからなんだ」

「何を?」

「俺が嘘を吐いていた理由」


花火の音が大きいはずなのに、ドクン……と自分の心臓が脈打つ音が妙にクリアに聞こえた。
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