その花が永遠に咲き続けますように
「俺も本当は咲や皆と同じ高校を受験するはずだったんだ。でも、どうせ途中で通えなくなるなら、中途半端な思い出なんか作りたくないと思って受験をやめた。……楽しい思い出は後から苦しくなるだけだと思って、これからは人と関わらずに生きていこうって思ったんだ」


人と、関わらずに……。


私と同じことを考えていたんだ。
だけど、私とは理由が全然違う……。



「……だけど、高校生っていう響きにもやっぱり何となく憧れはあってさ。だから咲と初めて会ったあの日、気分だけでも高校生を味わうかと思って、兄貴の学ラン借りて高校の近くを歩いたりしてみたんだ。今思うとちょっとバカみたいだけど。……でも、そうしたら咲と会えた」

「え……」

「あの時、咲は鼻歌を歌ってて。俺、あの時の感覚は自分でも未だによくわからないんだけど、その歌を引き止めるように咲に声を掛けた」

「……ただの鼻歌だよ」

「うん。それでも引き止めたかった。それにさ、歌はロック調なのに、肝心の咲は何だか悲しそうな寂しそうな顔をしていて。ちょっと自分と重なったというか。それもあって、気付いたら話し掛けてた」


……ああ、駄目だ。
永君が、きっととても言い辛いことを頑張って話してくれているのがわかるから、涙は流したくないって思う。
けれど、初めて会ったあの時にそんなことを思ってくれていたなんて。

病気のことで苦しい思いをしていたのに、思い出を作るのも嫌で誰とも関わりたくないって思っていたくらいなのに。それなのに、私なんかを心配して声を掛けてくれたなんて……。


そう思ったら、堪えていたはずの涙がボロボロと溢れて止まらない。
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