その花が永遠に咲き続けますように
「ていうか、病気のことはともかく、同じ高校に通ってないこともずっと黙っててごめん。その理由を話すなら病気のことも話さなきゃいけないからなかなか言い出せなくて。悪意を持って騙そうとした訳じゃないんだ」

「わかってる。そんなの気にしないで」

「ありがと。……俺も、咲が一緒に音楽やろうって言ってくれたの、凄く嬉しかったよ」


橋の手すりに肘を置き、彼が再び花火を見上げる。


さっきよりも数段カラフルな花が夜空に次々と咲いていく……。



「俺、ギターは中学生の時からやってたんだ。と言っても兄貴にちょっと教えてもらった後は殆ど独学だから特別上手くはないし、プロになりたいとか大それたこと考えたこともなかったけど。でも俺も、高校生になったら誰かとバンドとかやりたいってずっと思ってたんだよ。病気になってからはギターもやめようとしたけど」

「……後で弾けなくなるのが辛いから? それなのに私が誘っちゃって……」

「咲は誘ってくれただけで、やるって決めたのは俺だから! ……それに、咲とならギターで思い出を作るのも悪くないって思ったんだ。だから文化祭のステージに立った」



あの日、永君が『今日が最初で最後』と言っていたのはそういうことだったんだ。
でもその後結局、私がバンドに誘ってしまった。

文化祭は、最初で最後の思い出だったはずなのに、その思い出を増やすことになった。……病気のことは何も知らなかったとは言え、私のしたことは正解だったのだろうか。
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