その花が永遠に咲き続けますように
「一人、ではない……」

震える声でそう答えるのが精一杯だった。
嫌でも思い出す。日奈にいじめられていた日々。
酷いことたくさんされた。たくさん……たくさん……。


「なんか様子おかしくない?」

日奈の隣にいた女の子が、私の顔を覗き込みながらそう言う。すると日奈が。


「あ〜、私、中学の時にちょぉっとこの子のこといじめちゃったからかなあ〜」


なんてことのないように。日常生活の雑談みたいに。そう答えた。


ちょっと? 私が悩んで苦しんで泣いた時間が、日奈にとってはちょっとのことだったの?


……転校してからも、本当は少しだけ望んでいた。日奈が私をいじめていたこと、少しでも後悔していたらいいなと。少しでも反省していたらいいなと。

それなのに……そんな気配、微塵もない。



「咲〜、大丈夫〜?」

「……っ」

「変な汗掻いてるよ〜? ……咲ってば、まだ私のこと怖がってるんだ? 可愛いね〜」

「え……?」

「その様子ならまだ充分、可愛がってあげられそうだね」


日奈の手が、すっと私に伸びてくる。

何をされるの? 怖い、怖い怖い怖い!
私はギュッと目を瞑った。


だけどその時。



「何してんの?」


その声にゆっくりと目を開け、顔を上げると、私と日奈の間に白山さんがいた。
彼女は日奈の手首を掴み、日奈を睨み付けていた。
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