その花が永遠に咲き続けますように
え……?



「曲は悪くないのに、詞がクソだ。薄っぺらい綺麗事をつらつら並べただけのつまんねー詞」

「こら、レイ!」

「俺は思ったことを言っただけだ」


そう言うとレイは私に背を向ける。そして背中越しに



「さっさと失せろ」



と言い放った。




部屋から出て、ぼんやりとエレベーターを待つ私のことを、キリシマさんが追いかけてきてくれた。


「咲ちゃん、レイがごめんなさいね。アイツは誰に対しても口が悪いから、気にしないで。嫌いにならないであげてね」


キリシマさんは、私のこともレイのこともフォローしてくれているけれど、私がショックを受けているのはそこではなかった。


「キリシマさん……」

「ん? なぁに?」


「私の歌、どうでしたか?」


その質問をぶつけると、キリシマさんの顔が明らかに曇った。

そして、ゆっくりと私の質問に答えてくれる。



「……レイも言っていたけれど、曲は良いと思った。高校生で、素人で、あそこまでの作曲が出来るなんて素晴らしいと思ったわ。でもね、なんか…….今日は心に響いてこなかった」

「心に響かない?」

「一ヶ月前にあなたの歌を初めて聴いた時……緊張で声はところどころ裏返ってたし、焦りや動揺も伝わってきた。だけどあの時は、心に響く何かがあったの。歌手として必要不可欠なものが。……だけど今日はそれが感じられなかった」

「……」

「誰かに歌を届けるのに必要なのは、テクニックだけじゃないの。熱い思いが必要なのよ。あなたが今日レイに伝えたかったのは、本当にあの詞の気持ちなの?」


……その質問には、何も答えられなかった。


答えられなかったけれど、答えはわかっていた。


……答えはノーだ。



でも、だとしたら私が歌に乗せて本当に伝えたいことって何……?
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