その花が永遠に咲き続けますように


「心配掛けてごめんな」


真っ白なベッドの上に横たわりながら、元気そうな顔で永君が言う。


あの後、救急車で運ばれながらも、病院について処置をしてもらってからはすぐに会話が出来る程に落ち着いた。


救急車には私が同乗して、その後、荻原さん達三人も、藤先生の車で病院にやって来た。



「おう。びっくりしすぎてオロオロするしか出来なかったよ、俺」

と武入君が永君に話す。
そんなことない。オロオロしていたのは私の方で、武入君は私を何度も落ち着かせようとしてくれていた。



「身体の調子はどう? どこも痛くない?」

荻原さんが優しい声色で永君に問い掛けると、彼は「痛くはないよ。大丈夫」と答える。


でも。



「ただ……病気の進行が思ったより早いって言われた。まだ多少は身体動くけど、しばらくは車椅子乗ることになるかも」


え? と思わず言葉に詰まる。確かに、年内には車椅子になる予定だって言ってた。でも、今年はまだ三ヶ月もあるのに。



「だから、急なんだけど、もう皆とバンドは出来ないかもしれない」



突然の彼からの言葉に、私達は戸惑いを隠せない。
だけど、一番ショックを受けているのは永君自身だろう。


それに、私は戸惑いはしつつも、凄く悲しいーーという訳ではなく、



「……良かった」



という言葉が溢れる。今の話の流れで〝良かった〟はおかしいと思われたのか、メンバー達の視線が私に集中する。



「永君が、生きてて良かった……っ」



青白い顔に、呼吸も浅くて、何度呼び掛けても返事がなかった。本当に死んでしまうのではないかと思った。


堪え切れなくなった涙が私の涙を伝う。


一緒にバンドが出来なくなったのは勿論悲しい。だけど、生きてる。永君はここにいる。それだけで、酷く安心した。
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