その花が永遠に咲き続けますように
スタジオには、レイとキリシマさんの二人が、あのA5 studioで待ってくれていた。
不合格となった先日のテストの日のように、二人に注目されながら、私はスタンドマイクの前に立っていた。
「いい? 咲ちゃん。どんな歌を歌っても、これはテストじゃないからね。あなた達が前座をやることはないからね」
キリシマさんが、口調こそは柔らかいもののしっかりとそう念押しする。そう言えば彼女は元々前座の件は反対していたな。
「わかってます。聴いてもらいたかっただけなんです。ワガママ言ってすみません。それなのに……」
一度言葉を区切り、レイの方に視線を向ける。
「こんなにもあっさりともう一度会ってもらえるとは思ってませんでした。自分からお願いしておいてこんなこと言うのもあれですけど」
私がそう言うと、レイはフッと笑った。いきなり呼び出されて怒ってると思っていたから、さっきから意外に機嫌が良いのが不思議だ。今日だって、キリシマさんは〝忙しいから会えない〟と言っていたらしいのに、レイが首を縦に振ったからこの状況が生まれているのだ。
「プロの歌手として、少しでも良い歌を聴ける可能性があるならそうしたかっただけだ」
ーー良い歌。先日はあれだけ全否定されたのに、今回は何故こんな風に言ってもらえるのかわからない。
だけど。
「はい。精一杯歌います!」
自信ないとか、中途半端だとか、そんな感情、もう持ち合わせてはいない。