その花が永遠に咲き続けますように
「調子が良ければ、歩くくらいはまだ出来るかもしれない。だけど、ステージに立って演奏するのは無理かな」

「そっか……。でも、当日はきっと観にきてね。キリシマさんにお願いして、一番良い席取ってもらうから」

「ああ。必ず観に行くから、頑張れ」

「うん」


そう言い合って、お互いに笑う。

だけど私の笑顔は多分とてもぎこちなかった。


確認しておきたかった大事なこととはいえ、悲しいことを言わせてしまった。


しんみりしてしまった空気を何とか変えたくて、私は何とか明るいテンションで話を続ける。


「当日はね、テストで披露した私の作詞作曲を皆で演奏することになったからね。これ、楽譜だよ」


私は鞄の中のクリアファイルからそれを取り出し、永君に手渡した。すると彼はとても驚いた顔をする。


「これ、どうしたの? 全パート書いてあるじゃん。咲が書いたの? 凄くない?」

「あー……いや。書いたのは私だけど、藤先生に書き方教えてもらったの。藤先生、音楽の先生じゃないのにこういうの詳しくて凄いよね。さすが、世界のキリシマプロデューサーの弟って感じ」

「なるほど。確かにすっげー」


本番では、永君の演奏はないけれど、楽譜には彼がもしステージに立つとしたらという前提で、彼のパートも書いてある。

たとえ本番は同じステージに立たないとしても、永君の部分だけ空白にするのは嫌だった。

それに、楽譜を見ることによって、もし元気になったらいつでも一緒に演奏出来るようにしようよという願いも込めた。
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