その花が永遠に咲き続けますように
電車に乗り、自宅の最寄駅で降りる。

当然ながら見慣れた風景だけれど、ここ最近は毎日夜遅くまで学校やスタジオで練習をしていたから、こんなに明るい時間にこの帰り道を歩くのは久し振りだ。


家まで続く大通りの一本道を、今日は手前の曲がり角で右に逸れる。


私の家からは徒歩で十五分程離れたところにある、とある家の前にやって来た。

ここへは中学時代、二、三回遊びに来たことがある。


インターホンを鳴らそうかと思ったけれど、その前に携帯を取り出し、メッセージを打ってみることにする。

だけど、家にいるかどうか確認のメッセージを打っている途中で、今まさに頭に思い浮かべていた人物がこの家に帰ってきた。


「咲?」


その人物は、私が家の前にいることに目をぱちくりさせていた。

それはそうだろう。アポなしに家に遊びに来るような、そんな楽しい関係ではないのだから。


「突然来ちゃってごめん」

私がそう誤ると、目の前の人物ーー日奈は、

「全然いいよー」

と笑って答える。勿論、目の奥が笑っていないことにはちゃんと気付いている。


「普段こんなに早く家に帰ってくることなんてないんだけどね。たまたま遊び相手が見付からなくてさー。まあたまには早く家に帰ってくるのもいいかなって。咲は私に何の用?」


話しながら、日奈は私の方へ一歩一歩向かってくる。
ただ歩いてくるだけなのに、じわじわと追い詰められているような気持ちになってしまい、背中に変な汗が伝う。
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