その花が永遠に咲き続けますように
だけど、また日奈から逃げる為に、今日はここへ来た訳じゃない。


「日奈に言いたいことがあって来たの」

私がそう答えると、「言いたいこと? なあに?」と彼女はわざとらしく首を傾げる。


私なんかに何を言われたって平気だぞという余裕を感じる。


実際、私は日奈に勝てる自信なんてないし、きっと私の方が日奈より弱い。心の強さに勝ち負けなんてないかもしれないけれど、もしそれが存在するというのなら、間違いなく私の負けだろう。


それでも。

このままじゃ、私は武道館のステージの上で旨を張って歌えないんだ。


胸を張れなければ、永君に私の歌はきっと届かない。



だから。




「例の写真……」


ぽつりと呟くと、日奈はすぐに「ん? 咲の裸の写真のことかな?」と返してくる。


思い出したくもない過去。このまま日奈に楯突かなければ、きっとあの写真は流出まではしない。
だけど、それじゃ駄目なんだ。


「あの写真、バラまいていいよ。SNSでどこまでも拡散してくれたって構わない」

「……は?」

「そうしたら、私はもう日奈に怯える理由はなくなるもの」


少し声は震えてしまったかもしれない。だけど、真っ直ぐに日奈の目を見て話せた。
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