その花が永遠に咲き続けますように
日奈から逃げて、家から遠くの高校に入学した。
高校に入学して、永君やseedsの皆と出会い、自分が変われた気がしていたけれど、それは気のせいだった。私は変われてなんかいなかった。皆に助けられていただけで、私自身は未だに日奈を恐れてビクビクするだけの情けない人間だった。
そんな自分から変わりたいと思った。
皆に助けられるだけじゃなく、私も皆を助けられるような存在になりたいと思った。
だから、日奈を恐れる理由なんかいらないと思った。
傷付いたっていい。だって、私はもう一人じゃないから。
本当の友達が、仲間が、いるから。
だから大丈夫。
「……私から逃げる気?」
日奈から低い声が発せられたと思ったのとほぼ同時に、突然肩を捕まれ、家を囲う塀に背中を打ち付けられる。
「痛っ」
「そんなこと許さないから! 何、偉そうなこと言ってんの⁉︎ あんたはずっと私に怯えながら私の言うこと聞いてればいいんだよ!」
打ち付けた背中も痛かったけれど、私の肩を掴む日奈の手にギュッと力が入って、思わず顔を歪めた。
……それでも、私がどこか冷静でいられたのは、こんなに取り乱した日奈を見るのが初めてだったから。
日奈は怒っているのではなく、動揺している。そう思えた。
「……ねえ。日奈は高校で友達いるの?」
「はあ?」
私の問い掛けに、日奈がわかりやすく怪訝な表情を見せる。
「いるに決まってんでしょ。あんたと一緒にすんなよ」
「その友達って、この間一緒にアイス食べてた子? その子は本当に友達? いつかの私みたいに、いつでも裏切る気なんじゃない?」
日奈は何も答えなかった。たとえ図星を突かれても、いつもの日奈だったら平気でそんなことないって答えられそうなのに、言葉に詰まっていた。
「……たとえ日奈は私のこと友達だなんて思ってなかったとしても、私は転入した日に日奈が話し掛けてくれて嬉しかったよ。友達だと思ってた。……でも、今は本当の友達がいるから。だから……」
言葉の続きを発するのに、一瞬躊躇った。だけど、目を瞑るとseedsの皆の顔が出てきて、私の帰る場所はちゃんとあるって思えたから。
「ーー日奈のことは、もういらない」
そう口にすると、私を掴む日奈の手の力がスッと抜けた。
高校に入学して、永君やseedsの皆と出会い、自分が変われた気がしていたけれど、それは気のせいだった。私は変われてなんかいなかった。皆に助けられていただけで、私自身は未だに日奈を恐れてビクビクするだけの情けない人間だった。
そんな自分から変わりたいと思った。
皆に助けられるだけじゃなく、私も皆を助けられるような存在になりたいと思った。
だから、日奈を恐れる理由なんかいらないと思った。
傷付いたっていい。だって、私はもう一人じゃないから。
本当の友達が、仲間が、いるから。
だから大丈夫。
「……私から逃げる気?」
日奈から低い声が発せられたと思ったのとほぼ同時に、突然肩を捕まれ、家を囲う塀に背中を打ち付けられる。
「痛っ」
「そんなこと許さないから! 何、偉そうなこと言ってんの⁉︎ あんたはずっと私に怯えながら私の言うこと聞いてればいいんだよ!」
打ち付けた背中も痛かったけれど、私の肩を掴む日奈の手にギュッと力が入って、思わず顔を歪めた。
……それでも、私がどこか冷静でいられたのは、こんなに取り乱した日奈を見るのが初めてだったから。
日奈は怒っているのではなく、動揺している。そう思えた。
「……ねえ。日奈は高校で友達いるの?」
「はあ?」
私の問い掛けに、日奈がわかりやすく怪訝な表情を見せる。
「いるに決まってんでしょ。あんたと一緒にすんなよ」
「その友達って、この間一緒にアイス食べてた子? その子は本当に友達? いつかの私みたいに、いつでも裏切る気なんじゃない?」
日奈は何も答えなかった。たとえ図星を突かれても、いつもの日奈だったら平気でそんなことないって答えられそうなのに、言葉に詰まっていた。
「……たとえ日奈は私のこと友達だなんて思ってなかったとしても、私は転入した日に日奈が話し掛けてくれて嬉しかったよ。友達だと思ってた。……でも、今は本当の友達がいるから。だから……」
言葉の続きを発するのに、一瞬躊躇った。だけど、目を瞑るとseedsの皆の顔が出てきて、私の帰る場所はちゃんとあるって思えたから。
「ーー日奈のことは、もういらない」
そう口にすると、私を掴む日奈の手の力がスッと抜けた。