その花が永遠に咲き続けますように
「今、〝こいつの笑顔見るの初めてだな〟とか思ったろ」

「えっ⁉︎ お、思ってません」


思っていたけれど、肯定するのは失礼な気がしてそう答えてみた。


「絶対思ってるよな……まあいいか。咲ちゃん、君には初めて会った時から失礼な態度を取ってしまって悪かったね」

「え?」

「俺は永が何より音楽を好きであることを知っていたからこそ、最後に音楽をやるなら中途半端は絶対に駄目だと……どうせやるなら全力で悔いのないようにやってほしいと思っていたんだ。だけどあの日、永が連れてきた君は機器の使い方もろくに知らない素人で、君と組むのはつい反対してしまったんだ」


申し訳ないといった表情でそう話す洋さんを見て、私はふるふると首を横に振った。


「とんでもないです。無知な素人だったのは事実ですし、文化祭のステージに立つまでの練習をするにあたって厳しくしていただいて、とても有り難かったです。あの時は打ち込みまで用意していただいて、感謝の気持ちだらけで、謝られるようなことは何もされていません」


そう答えると、洋さんはフッと優しく微笑んだ。永君にとてもよく似た笑顔だ。


そして。


「あの日、永が連れてきたのが君で本当に良かった」


そう言って彼は私に、右手をすっと差し出す。



「今日は頑張って。俺も応援してる」

「……ありがとうございます!」

私も左手を前に出し、洋さんと握手した。
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