その花が永遠に咲き続けますように
「……レイ?」

何も言わないレイの名前をとりあえず呼んでみる。

俺を見下ろすレイの瞳はいつもの様に鋭く、だけど冷たさはなかった。

睨み付ける様に怖い顔をしているのに、何故か温かさと優しさを感じる様な……不思議な感覚だ。



「お前、今のステージ観て何を思った?」


レイからそう問われる。


何を思ったか?



響く歌声、重低音。歓声、拍手、熱気。



この場所でしか得られないそれらは、こんなに近くにあって、だけど俺が手を伸ばしても届かないほど遠い。



ああ、




何でステージに立っているのは俺じゃないんだろう



って。




でも、実際にステージに立っていたレイにそんなことは言えず、俺はレイから目を逸らして言葉を詰まらせる。


そんな俺の心情を、レイはお見通しなのだろう。



「立てなくても、歩けなくても、ギターは誰にも弾ける」

「え?」

「ちゃんと悔しい顔が出来んじゃねーか。だったら、お前の居場所はあそこだろ」


レイはそう言ってステージをーー



咲の隣を指差した。
< 168 / 183 >

この作品をシェア

pagetop