その花が永遠に咲き続けますように





ステージ袖から戻ってきたのはレイではなく、永君だった。


レイのギターを持って、こちらへ歩いてくる。



信じられない。嬉し過ぎて、心臓がバクバクと脈打って、痛いくらいだ。




神様は、きっと公平だ。
辛いことがあるならその分、最高の景色だって見せてくれる。



五人で、演奏が出来るんだね。




観客席がざわついているのがわかる。レイが姿を消したかと思えば、プロでもなんでもないただの高校生が姿を現し、その上これから歌おうとしているのは、その素人バンドのオリジナル曲だ。戸惑うのは当然のことだと思う。


観客が観たいのはrowdyなのもわかっている。


だけど、

今だけはどうか。


最初で最後だから。



seedsのステージにさせてください。





「永君……」


私の隣に立つ彼の名前を恐る恐る呼ぶと、彼は。



「一曲目、遅刻しちゃったな」



そう言って、いつもの優しくて明るくてーーそして温かい笑顔を見せてくれた。



ああ、いつもの永君だ。

いつものーー



私が大好きな人だ。





涙が溢れそうになるのを堪えながら、メンバーの顔をぐるっと見渡す。

三人共泣きそうな顔をしていて、それがなんだかおかしくて、私の涙は引っ込んでしまった。


居心地の良い、大好きなメンバーが集まる、大切な場所。



この場所で今から、心を込めて歌う。



そう言えば、永君には歌詞はまだ教えてなかったっけ。


聞いたら驚くかな。永君へのラブレターなんだもの。


私からの告白は拒絶されてしまった。だけど、歌で気持ちを伝えるのはどこまでも自由のはずだから。


この恋を叶えたい訳じゃない。だけど、どうか届いて。


一生変わることのない、私のこの気持ちだけは。



皆で奏でる最後の演奏に、私は心から、愛を歌った。
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