その花が永遠に咲き続けますように
「すっげえ歓声だな〜」
溜め息を吐きながら、武入君がボンヤリとそう言った。
私達の視線の先にいるのは、大盛り上がりのライブ中のrowdy。
私達は前座が終わった後、正面二階の関係者席に案内され、そこからライブを鑑賞させてもらっていた。
近くには数名のスタッフさんが入れ替わりで動いているけれど、他の観客はいない。
武入君の溜め息の理由は、きっと歓声と拍手の大きさだろう。
今まさに会場全体に響き渡るそれらと、私達の演奏が終わった後のそれらとでは、大きさも盛り上がりも全く別物だ。改めて、ここにいる観客は私達のことには大して興味なかったんだと思い知らされる。
だけど。
「前向きに捉えようよ」
私がそう言うと、四人は同時に私に振り向く。
「最初に幕が上がった瞬間に聞こえた拍手は、私達へのものではなくて、同じステージにいたレイへのものだったと思う。だけど、五人で二曲目を演奏し終えた後の拍手と歓声は、たとえ大きなものではなかったとしても、間違いなく私達だけのものだったよ」
歓声も拍手も、その大きさを比べる必要なんてない。
私達だけに届いたそれらを、ずっと大事に覚えていたい。
だけど、四人は突然プッと吹き出し、そのまま笑い出した。
「そんなにおかしいこと言った?」
「ごめんごめん、だってさ」笑いを必死に堪えようとしながら瑠夏は続ける。「出会った頃の咲を思い出しちゃったから」