その花が永遠に咲き続けますように
永君と武入君のそんな会話を聞いていると、恵那子が言葉を挟む。


「もしかしたら、レイと永君は特別な関係だったんじゃないかな?」

特別な関係? と永君が首を傾げる。


「昔、何かの本で読んでことあるよ。人間って、魂を分かち合ったような存在が世界のどこかにいるんだって。そして、その二人は出会った時に他人とは違う特別な感覚に惹かれ合うんだって。異性で言うと、いわゆる運命の相手ってやつだね」

「運命の相手って。俺もレイも男だし」

「だからそれは異性の場合だって」


「まあ、ビッグアーティストのレイと、ただの平凡な高校生の俺がそんな存在だったら、そりゃあ嬉しいけどね」


まあ、魂を分かち合ってる割には何の共通点もないけど、と言って笑う永君は、恵那子の言うことを一ミリも真に受けてはいない様子。

と言っても、恵那子ですら「だよねー」なんて言って、最初から冗談を言っているだけみたいだけれど。


だけど私は、もしそうだったら素敵だななんて、ステージに立っているレイを見ながら考えていた。


会場に響き渡るレイの歌声。rowdyの演奏。


全てを結び付けてくれたのは、音楽という大切な存在。



ぼんやりとそんなことを考えていると、さっきまで笑ってた武入君が、急に声を落として、真剣な口調で話し出す。


「なあ、このバンドーーこれからどうする?」


その問いに、皆が言葉を詰まらせる。恵那子も瑠夏も、私も、永君も……。


私達は今日のステージで、最高の思い出を作ることが出来た。迷いなく、胸を張ってそう言える。

だけど永君は、きっともう、ステージに立つことは出来ない。

それを踏まえた上で、永君がいないseedsでバンドを続けていくのか……今日以上の最高のステージを目指していくのか……そういうことだ。
< 174 / 183 >

この作品をシェア

pagetop