その花が永遠に咲き続けますように
戸惑いがちなその声に、思わずマスクの下で笑いそうになってしまった。そりゃあそう思うよね、と思ったから。

でも、その理由についての説明はもう一人の女の子がしてくれていたから、私は静かにその場を去った。





半年前に購入した、都内のはずれにある一軒家。
特別広くて特別高級感のあるような家ではなく、家の中と庭が少しゆったりとしているくらいで、それ以外はごく普通の家だ。


でもそれでいい。二人で暮らすには充分過ぎる大きさだし、何よりこの家なら、車椅子も楽に通れて、家の中でも外でもギターを鳴らせる。


二人で住むならこの家がいい。そう思って購入した家だ。



「ただいまー」


玄関の戸を開けて呼び掛けるも、彼からの返事はない。
この時間は部屋にいるはずだ。そう思って彼の部屋に行ってみるも、もぬけの殻だ。

すると、庭の方から物音が聞こえた。
あっちか、と思いながら私もそちらへ向かう。



「こんな所で暑くない?」

予想通り庭にいた彼は、私の声に反応してこちらに振り向く。そして彼ーー永君は、高校生の頃と何ら変わらない笑顔で私を見た。


「お帰り。ちょうど風が出てきたからね。涼しいよ」

そう言われると、確かに心地良い風が私のセミロングの髪を揺らした。

何となく、車椅子に座る彼の横に立ってみる。

視線の先には、見慣れた平凡な街並み。それでも、二人でこうして同じ場所で同じものを見つめているだけで私は幸せを感じる。
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