その花が永遠に咲き続けますように
「咲、仕事はもう終わったの?」

「うん。今日は簡単な打ち合わせだけだったから。他の三人はそれぞれ次の仕事があるみたいだったけど。そう言えば、さっき外で、うちらの話をしてた女の子達がいたよ。曲が良いって言ってくれてた」

「へぇ〜。やった」

「あと、CDジャケットには四人しか写ってないのに何で五人組バンドって言われてるの? とか話してた」


私がそう言うと、彼はさっきの私みたいにハハッと笑った。



そんな話をしながら、私は四年前のことを思い出す。




『俺の夢は、これからseedsの曲を作っていくこと』




それが、あの日、あのステージで演奏した後に永君が語ってくれた、彼の夢。



武道館のステージで私が作詞作曲した曲を演奏しながら、自分もこんな曲をーーいや、それ以上の曲を作りたいと思ってくれたのだと彼は教えてくれた。


そして、彼が作ったその曲を歌うのは、演奏するのは、他の誰かじゃなく、seedsが良いんだ、と。



メンバーは誰も反対はしなかった。するはずがなかった。



『自分の足でステージに立つことや、ギターを弾くことはもう出来ないかもしれない。けどやっぱり、音楽からは一生離れたくない。病気になって、一度は音楽の全てを諦めようとしたけど、皆のお陰で、咲の作った曲のお陰で、


諦めなきゃいけない夢なんて何一つないんだって思うことが出来た』



彼のその言葉を、私はあれから一日だって忘れたことはない。


私もこれからきっと、永遠に自分の夢を追い掛ける。


seedsのメンバー皆で音楽に一生を注いでいくことを、この時に全員で決めた。




そしてーー幸運が重なったことも多かったけれど、rowdyの前座として既に話題性のあった私達seedsは、高校卒業前にデビューを果たし、その後もライブを中心にお仕事を続けさせてもらっている。



永君自身の希望で、永君はメディアには顔は出さない。

だけど私達の希望で、メンバーは五人であることと、seedsの作曲をしているのは永君だということは公表している。




武道館のステージの後から彼の病気は進行していき、その年の年末辺りからはずっと車椅子で生活している。


それでも、彼はたくさんの素敵な曲を私達の為に作る。彼は作ってくれた曲を歌い、私がそれをギターで演奏しながら楽譜におこす。



車椅子での生活は不自由なことも多いと思うけれど、彼は辛そうな顔は全然見せない。

強がってる部分も、もしかしたら多少はあるかもしれない。だけど、無理している訳じゃないのはわかる。

いつも笑顔でいられるのは……あのステージの後で夢が見つかったからかもしれない。

その夢が見つかったきっかけが、いつしか私が彼を音楽に誘ったことなら……勇気を出して良かったって、心底思う。



勇気があれば、未来は明るい方向に変わっていく。私の人生も、永君の人生もそうであるように。
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