その花が永遠に咲き続けますように
「さーく」

その声に振り向くと、いつもの自転車を押しながら片手を挙げる、永君の姿がそこにあった。

彼の姿を見て、どこか安心してしまった部分が半分、今は会いたくないなって思ってしまった部分が半分、あった。


「お? 何か元気ねーじゃん」

「え、別に……そんなことない」

「そうか? まあ咲はいつも元気ねーか」

いやいや、それってどういう意味、と思ったけれど、私ってあんまり笑わないし、はきはき話す訳でもない。いつも元気ない人って思われていても仕方ないのかもしれない。


彼は特に気にする様子もなく、いつもの石垣の場所にやって来ると、当然の様に自転車を停め、石垣に腰をおろした。


今日は帰ろうかなと思ったのに、彼が手招きをするから、吸い込まれる様につい彼の隣へ座ってしまった。


「はー、今日はあっちぃ」

鞄から内輪を取り出してパタパタと仰ぎ出す彼を見て、準備いいなぁって思う。彼が作り出す風が私にも若干届き、涼しい。


「あ、内輪使う? もう一つあるからこれ使っていいよ」

馬をモチーフにした地元のゆるキャラが描かれた、恐らく去年の夏祭りとかに無料配布されたであろうその内輪を私に差し出す彼。


「ううん。大丈夫」

「そう? この内輪、去年うちの高校の文化祭に遊びに行った時に貰ったんだよ」

「え……」

文化祭、というワードに上手く返事が出来ない。
白山さんの言葉も荻原さんの言葉も色々と思い出す。気にしなくていいはずなのに。
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