その花が永遠に咲き続けますように
「音楽?」

永君が、きょとんとした顔で私を見つめる。

妙に恥ずかしくなり、顔も急に熱くなって、思わず俯いて彼から目を逸らしてしまった。


いきなりこんなこと言われたら、戸惑って当然だよね。何の前触れもなく、いきなり一緒に音楽やろうだなんて……。



だけど誘ったことには何一つ後悔していないことにも気付く。



すると永君が、ゆっくりと口を開く。



「音楽……」



その声はどこか深刻そうに感じた。

私の言葉が、予想以上に彼を困らせていることに気付き、すぐに「無理にとは言わない!」と言ったのだけれどーー



少しの間の後、彼はニッと唇の端を釣り上げ、



「咲、ちょっとついてきて!」



そう言うと、彼は私の手首を掴んで立ち上がる。引っ張られるようにして私も立ち上がる。


「えっ、な、何?」

「説明は後でするよ。自転車、後ろ乗って」


私は彼が跨る自転車の後ろに座らされる。



「……って、思わず乗ってしまったけど、自転車の二人乗りは交通法違反だし、何より危険……」

「しっかり掴まってろよー」

「きゃっ⁉︎」


急に発信した彼の自転車は、二人分の体重が乗っかっているとは思えないくらいにスイスイと進んでいく。


……風が気持ち良い。



でも、どこへ行くんだろう⁉︎ 音楽の話をしてたんじゃなかったっけ?



……自転車の二人乗りは、そう言えば初めての体験だ。

想像より遥かに不安定で怖かったから、私は永君にギュッと強く掴まった。
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