その花が永遠に咲き続けますように

そうして連れてこられたのは、さっきまでいた場所から十五分ほど自転車を走らせたところにある、鉄筋コンクリートの建物だった。
入り口の看板には『スタジオみんとの樹』と書かれている。


「スタジオ?」

首を傾げる私に、永君は「音楽スタジオだよ」と答えてくれる。


音楽スタジオ……ここがそうなんだ……。ずっと興味はあったけど初めて来た……。



「って、どうしてここに?」

「うん、とりあえず中入ろう」

「う、うん?」

マイペースな永君に言われるがまま、とりあえず彼と一緒にスタジオの自動ドアを潜った。



「おはようござ……って、永? どうした」


受付でこちらを見ながら挨拶してくれたのは、二十代位のお兄さん。受付にいるということはここの店員さんだろう。サラサラした茶髪で、少し長目の前髪の隙間からは大きな二重の瞳が覗く。
この男性、何となく永君と似ているような気がする……。



「やっほー、じゃなかった、おはようございますって挨拶しなきゃいけないんだっけ? おはようございまーす、もう夕方だけど」

「はいはい、おはようございます。……って、そちらの子は?」

私に気付いた店員さんがそう尋ねてくる。
相澤 咲です、と挨拶すると、店員さんは永君に振り向き「え、まさかお前の彼女?」なんて聞く。


「彼女じゃないよ。咲は俺の友達」


友達……。

そんなもの、もういらないし作らないって思っていたのに……永君にそう言ってもらえると、嬉しく感じてしまう。
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