その花が永遠に咲き続けますように
「咲。この人、俺の兄」

店員のお兄さんを指差しながら、永君が私に言う。

なるほど、お兄さんか。顔似てるし、妙に納得した。



「咲ちゃん、だっけ? 永の兄の洋(よう)です。よろしく。弟と仲良くしてくれてありがとう」

い、いえそんなーーと慌てて返す。……仲良くしてもらっているのは私の方だと思ったから。



「……で。わざわざここへ来たってことは、まーた部屋を貸せってことか?」

どこか呆れた顔で、洋さんが永君に言う。


「そういうことだね」

「仕方ねーな。何度も言うけど、基本は予約制だからな」

そう言うと、洋さんは手元の資料のようなものを確認していく。永君が隣で「今、空いてる部屋探してくれてる」と教えてくれた。


……永君、ここで何をするつもりなんだろう?


すぐに洋さんに「一号室使っていいぜ」と言われる。


「兄貴もちょっと一緒に来てよ。咲の様子からして、多分スタジオ初めてっぽいから、色々説明してやってよ」

「いや、俺バイト中だし。説明ならお前がしてやれよ」

二人のやり取りを、私は何と口を挟んでいいかわからないまま、ただ黙って聞いている。

ていうか、スタジオ来るの初めてってバレてる。そんなに挙動不審だったかな? 何か恥ずかしいや。


結局、洋さんは私達と一緒に十号室に来てくれることになった。


受付から奥に進むと、カラオケボックスみたいにいくつも部屋が並んでいた。


右側の一番手前の部屋の、赤い扉を洋さんが開ける。
中の広さは八帖で、このスタジオの中では一番小さい部屋なのだと、部屋に入りながら教えてくれた。
< 38 / 183 >

この作品をシェア

pagetop