その花が永遠に咲き続けますように
部屋の中に入ると、壁は一面、扉と同じ赤色で統一されていた。その真っ赤な壁は、どこか非日常を感じさせてくれて、密かにドキドキした。


広くはない部屋だけれど、ギターアンプ、ベースアンプ、ドラムセット、スピーカー、スタンドマイク……他にも多くの機材が設備されていた。片側は鏡になっているから、練習しながらその様子を確認することが出来そうだ。



「じゃあ咲ちゃん、とりあえずPAのセッティングしてくれる?」


洋さんに突然そう言われ、「え?」と戸惑う。

えーと、ミキサーのことだよね? セッティングというと……とりあえず電源を入れればいいのかな、と電源スイッチに手を伸ばしてみる。すると。


「わっ、ちょっと待った!」

洋さんに大きな声を出され、思わず肩を震わせて驚いてしまった。


「機器の電源入れる時は、必ずボリュームを0にしないと! そうしないとスピーカー壊れたりするから!」

洋さんは言いながら、ミキサーのボリュームのつまみを回し、音量を下げる。


「す、すみません」

「別にいいけど……スタジオ来るの初めてっていうか、音楽自体が素人? 誰とも組まずにずっと一人で音楽やってた永が連れてくるくらいだから、凄い子なのかと思ってたけど」


無知の素人でごめんなさい、と心が痛む。


ていうか、〝一人で音楽やってた〟……?


その言葉が気になって永君の方を見ると、彼はスタジオのギターを手に取り、軽く鳴らした。
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