その花が永遠に咲き続けますように
その曲を聴きながら、自分の歌声もそっと上乗せる。

鼻歌を小さく口ずさみながら、駅まで歩き続けていく。


さっきまで、辺りに誰もいないこの景色を歩いている自分に違和感を覚えていたけれど、今は、ここにいるのが自分だけで良かったと思う。そのお陰で、こうやって歌を口ずさみながら帰ることが出来ているから。曲を聴くことも、歌を歌うことも、私にとっては至福の時間だ。



そうやって歩いていると、曲がサビに入った辺りで、信号待ちのため足を止める。



その時、ふと人影の様なものを感じて、視線を動かす。

そしてギョッとする。視線を向けた石垣の上に、同い年くらいの男の子がいて、私のことを凝視していたからだ。

まさかこんな所に人がいるなんて思いもしなかった。一人で鼻歌を歌っている私が滑稽で見つめているのだろう。勿論、彼に気付いた瞬間に鼻歌は引っ込めた。


学ランを着ているところを見るに、何年生かはわからないけれど同じ高校の生徒だろう。染めているのか地毛なのかわからないくらいに少し茶色がかった髪が、ふわふわと揺れている。

そして、石垣の上で野良猫と思われる猫二匹に餌をあげていた。


恥ずかしさのあまりすぐに顔を背けるけれど、無情にも信号機はまだまだ青になる気配はなく、気まずい空気が流れる。
< 4 / 183 >

この作品をシェア

pagetop