その花が永遠に咲き続けますように
「永君、ギター弾けるの?」

問い掛けると、彼は手を止めてこちらを見て、


「そんな上手いって訳じゃないけどなー」


と答えて笑う。


上手くなくたって、弾けるだけで凄いと思う。私も、ギターはずっと憧れていたけれど……


「咲は、楽器は何か弾ける?」


そう尋ねられて、ドキリとする。聞かれて当然だよね、私から〝音楽やろう〟って誘ったんだから……。


「その……ずっと興味はあったんだけど、家にギターがなくて。親には、高校生になったら誕生日プレゼントに買ってやるからそれまでは我慢しろって言われて」

「咲、誕生日いつ?」

「一月……」

「ははっ、まだまだ先だな」

ギターだけじゃない。ピアノも学校の音楽室で借りる程度にしか弾けないし、他に得意な楽器もない。自分から誘っておきながら楽器未経験という事実が何だか恥ずかしいし、情けなくも感じてきてしまったけれど、彼はそれをバカにしたり文句を言ったりはしなかった。その代わり、


「何かやりたい楽器ある?」

と聞いてくれて。



「……やっぱ、ギターかな」

「おー、いいじゃん。じゃあ二人でギターだな」

「……でも、それ以上に」

「ん?」


少し緊張するけれど、どうしても言いたいこと。
それに、永君ならきっと笑わないで聞いてくれるから、勇気を出して言おう。



「歌いたい。ボーカルをやりたい」
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