その花が永遠に咲き続けますように
私がそう言うと、永君はきょとんとした顔をして、大きな二重の瞳を何度か瞬かせる。そして。


「おう。それは最初からそのつもりだったぜ」

「えっ」

「俺はギターはまあ弾けるけど、ボーカルって柄じゃないし、それに……」


それに? と私が首を傾げると。



「初めて会った時、鼻歌歌ってじゃん。その時に、この人が思いっ切り歌ってるの聴いてみたいなーって惹かれたんだよなあ」

「え……」


ウソ……初めて会ったあの時に、そんなことを思ってくれていたの?

たった数秒のフレーズを、鼻歌で歌っただけなのに……。



「咲ちゃん、自分でボーカルやりたいって言い出すくらいだし、歌に相当自信あるってこと?」

そう聞いてきたのは洋さんだ。
何だか、棘のある言い方。もしかして私、嫌われてる? 何か失礼なことをしてしまったのだろうか。あ、さっきスピーカーを壊しかけてしまったから?


「兄貴、あんまり嫌味な言い方するなよ」

と、永君が言ってくれるけれど、



「永とバンドやるっていうのなら、素人と半端なことなんかさせられない。せめて、無知でも実力がなけりゃ俺は認めない」


と言われてしまう。
まさか、認めるか認めないかという話になってしまうとは思っていなかった。
それにしても、弟のバンド相手にそこまでのことを望むとは、洋さんって変わっている。もしかして、ブラコン……?


それとも、他に何か理由があるのだろうか。

それはわからない。でも。



「あ、あの」

私は緊張する声を絞り出して、洋さんに伝える。


「自信がある訳じゃないし、上手いかどうかはわかりません。だけど、歌うのが好きっていう気持ちは誰にも負けてないつもりです」
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