その花が永遠に咲き続けますように
スタンドマイクの前に立ち、深呼吸する。

永君もギターの調整をしたのを確認してから、息を吸い込む。


ーーその瞬間、気分が高揚して、無意識に笑顔になった。


やっぱり私は、音楽が好きなんだ!



久し振りに、大きな声を出して歌った。気持ち良い。目を瞑ると、私はこの曲の主人公になった感覚に陥る。自分以外の誰かになれるーーそれも、私が歌を愛する理由の一つ。



そして、永君のギターの音も心地良い。
誰かに伴奏をつけてもらいながら歌うのは初めてなのに、ずっと昔から知っているようにしっくりくる。


気が付いたら、あっという間に一曲を歌い終えていた。


そして、ハッと我にかえるーー思わず、終始ただただ楽しんで歌い続けてしまったけれど、洋さんの目にはどう映っただろう?



「兄貴、どうだった?」

私の代わりにそう聞いてくれたのは永君だ。私もゴクッと唾を飲み込んで緊張しながら洋さんを見つめる。


すると突然、さっきまで壁に寄りかかっていたら洋さんが急にツカツカと私の正面まで歩いてくる。

な、何? さっきよりも顔が怖い気がする……。

そんなに怒らせてしまう程、私の歌は下手だったのだろうか。


「あ、あの……?」

「どこかで誰かに歌を習ったことは?」

「え?」
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