その花が永遠に咲き続けますように
彼のその提案に、私は思わず目を丸くしてしまう。

文化祭って……そりゃあ確かに文化祭では、申請さえ通れば誰でも中庭のメインステージに立つことは出来るけれど……。


「い、いきなり全校生徒の前でなんて……」

「そうだぞ、永。あの文化祭のメインステージは、見るも見ないも観客の自由だから、全校生徒がわざわざ足を止めて見てくれる訳ないだろうが」

「そうそう……って、違う! そうじゃなくて!」

私が言いたいのはそこじゃない。ステージを見るのは確かにお客さんの自由だけど、メインステージなだけあって、たとえ私達に興味がなくてもとりあえずそこにいるお客さんは多いだろう。


「……ていうか洋さん、うちの高校の文化のこと詳しいんですね」

「ん? ああ、OBだからな」

ちなみに卒業したのは今年の三月で、今は大学一年生。そして、ここは親戚が経営しているスタジオで、趣味と実益を兼ねたここでのアルバイトを週に何度かしているらしい。


「けど、まぁ。文化祭っていうのは良いんじゃねーか? ちょうど二ヶ月後くらいだしよ、二、三曲出来るようになって、ドカンと盛大に演奏してこい!」


結局、文化祭で演奏するという案には、洋さんも賛成みたい。私には不安しかないのだけれど、大丈夫だろうか。私みたいなのがステージに立って歌っても、誰も聴いてくれなくて永君に迷惑を掛ける可能性だってある。


でも、ここで逃げたら永君を誘った意味がない。

逃げたくない。私は少しでも、変わりたい。


「わかった。文化祭までの二ヶ月、練習頑張ろう」
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