その花が永遠に咲き続けますように
「なあ」

右耳に、呼び掛けられるような声が届く。おそるおそる右側に振り向くと、予想通り、その男子が私をじっと見つめていた。


恥ずかしくて仕方なかったから、「……何ですか?」としらばっくれてみたけれど、彼は容赦なく、


「今歌ってたの、何て曲?」


と直球に聞いてくる。ああ、顔から火が出そうなくらいに恥ずかしい。



「今のは……その……。rowdyっていうアメリカンバンドの曲で……」

「どういう系の曲?」

「……ハードロック……」


なるべく人と話すことは避けたいのに、間髪入れずに質問をぶつけられる。


無視すればいいだけのことなのだけれど、誰かと交わす〝音楽の話〟に、どこか嬉しさを感じてしまっている自分がいる。



「ねぇ、聴かせてよ」

「え?」

「その曲聴いてみたいから、ヘッドホン貸して。ほら早く、ここ来て」

彼はそう言いながら、石垣の自分の隣のスペースをポンポンと右手で叩く。

隣には座らなかったけれど、私はヘッドホンを外し、彼に近付いた。
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