その花が永遠に咲き続けますように
彼がヘッドホンを装着したのを確認し、再び曲を流す。
それを聴き始めた彼は、しばらく無言で音楽に耳を傾け、数秒後にパッと明るい笑顔になった。
時間的に、笑顔になったタイミングは恐らくサビの部分だろう。
アップテンポな曲調が、サビではそのパワーを一気に増す。ボーカルの力強い歌声も相まって、私もこの曲のサビは大のお気に入りだ。


そして、一番が終わったと思われるタイミングで彼はヘッドホンを外すと。



「超良いじゃん、この曲! すげー好きになった!」

白い歯を覗かせながら、やっぱり笑顔でそう言ってくれた。
さっき突然話し掛けられた時は、クールで無愛想な人かなっていう印象だったけれど、話してみると明るいし、チラッと見える八重歯が可愛いとさえ思った。


「で、でしょ? 私も凄く好きな曲なんだ」

「歌声もかっこいーな。でもさすがに、一部しか英語は聞き取れなかった」

「一部? 他は聞き取れたの?」

「俺も洋楽好きで、小さい頃から英語の曲聴きまくったりしてたから……ていうかあんた、いつまでそこにいるの?」

「はっ?」

いつまでそこにいるのって……もしかして、信号が青に変わったから帰れってこと? 自分から引き止めておいてそれは酷い。大体、私のヘッドホンはこいつがまだ手放さない。


と思っていると、彼は再び自分の隣をポンポンと叩く。


……あ、帰れっていう意味じゃなくて、早く座れっていう意味だったのかな。


気恥ずかしさを感じながらも、もう少しrowdyについて語りたいと思い、私は彼の隣に腰掛けた。
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