その花が永遠に咲き続けますように
演奏の準備は、実行委員の人も手伝ってくれてすんなりと終わった。
ドラマやキーボードは実際には使わないけれど、片付けまですると更に時間が掛かるから、ステージ上にそのままだ。

準備にはさほど時間は掛からなかったはずだけれど、その間にかなりのお客さんがステージ前から去っていくのがわかった。制服姿の一年生で、しかもたった二人のバンドなんて、誰も興味はないということだろう。


だけど、私達の演奏を待ってくれている人もいる。
荻原さんもどこかにいてくれているかもしれはい。
洋さんも、必ず聴きにくるって言ってくれていた。


何より、私自身、歌いたくてうずうずしてきた。
変なの。さっきまで緊張して仕方がなかったのに、ステージに立った瞬間、緊張は増すどころかどこかへ行ってしまった。



スタンドマイクを両手でギュッと握り、斜め後ろにいる永君に視線を向ける。

彼も準備が出来ているようで、ギターを構えながら微笑む。

私は再び前を向く。


今日歌うのは、三曲。全て一番だけを歌う。


一曲目は色々悩んだけれど、初めてスタジオに行ったあの日、永君の前で思いっ切り歌った曲ーーrowdyの【for me】。

日本ではメジャーな曲ではないし、歌詞も英語だから掴みとしてはどうなのだろうと私は思ったのだけれど、永君と洋さんが強く勧めてきたのだ。歌い出しからインパクトがあるこの曲は、私の声と歌い方に合っていて、多くの人を惹きつけることが出来るーーと。


人を惹きつけるーーそんな力が私にあるのかはわからないけれど……


私は歌った。大好きなこの曲を、全力で。
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