その花が永遠に咲き続けますように
「じゃあ、帰りますか」

にこっと微笑む永君にそう言われ、一緒に生徒玄関を後にする。
本当に帰っちゃっていいの? と聞こうかとも思ったけれど、そう言えば彼もさっきまで教室に戻ってたはずなのにいつの間にか外履きだし、もしかしたら最初から帰る気満々だったのかもしれない。



校門を抜けて少し歩いたところで、グラウンドの方から賑やかな歓声らしきものが聞こえてきた。

何だろう、という顔をして振り向いた私に、「毎年後夜祭の前に、ホースで水を撒いてグラウンドをぐちゃぐちゃにして、泥かけして盛り上がるらしいよ。兄貴が言ってた」と永君が教えてくれる。


「泥かけ…….楽しいのかな、それ」

「先輩も後輩も教師も無礼講ではしゃげるから楽しかったって兄貴は言ってた。まあ、咲はそういうのは苦手そうだね」

「だね……」

「俺もだけど」

そう言って、あははと笑う彼を見て、何だか安心する。彼は私のことを否定しないし、それどころか、性格は違えど価値観の一致は多くて、一緒にいて本当に楽だ。


「で、泥かけの後にフォークダンスするのも恒例なんだって。これも兄貴情報」

「泥だらけで? ていうか、フォークダンスって何だっけ。手繋いで踊るやつ?」

「そうそう。こうやって」


わっ! と、危うく変な声を出しそうになってしまった。
だって、彼が何の前触れもなく急に私の手を握ってくるから。
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