その花が永遠に咲き続けますように
え……?

思わず、固まってしまった。
だって、当たり前の様に〝次〟があると思っていたから。



「どうして……? あ、私の歌が下手だったから……?」

「それは違う!」

永君が、彼にしては珍しく声を荒げて私の言葉を否定する。


「寧ろ、咲の歌は上手くて、凄くて、俺も本当はまた一緒にステージに立ちたい!」

「じゃあーー」

「でも駄目なんだよ!」


強くそう言われ、私は完全に言葉に詰まってしまった。


彼もすぐにハッとした表情になり「ごめん、大きな声出して」と言う。


もう一緒に演奏出来ないーーそう言われて凄く悲しいけれど、永君自身もとても切なそうな顔をしている。


今後は一緒にステージに立てない、その理由はわからない。だけど。


「……わかった」


私は、精一杯の笑顔で永君を見つめ、


「理由は、もう聞かない。誰にも言いたくないことがあるっていう気持ちは、私にもわかるから」


そう答えた。その時、私の頭の中には日奈にいじめられていた頃の思い出が蘇っていた。出来ることなら誰にも言いたくない思い出だ。


永君にも、そんな深い事情があるのかもしれない。それならば、もう何も聞かない。



「私、これからも歌や音楽を続けていく。だからって訳じゃないんだけど、その……」

「咲?」



「……一緒にバンドをやるのは今日で最後でも、これからも友達でいてくれる?」


そう問うと、彼は丸い目を何度か瞬かせてから、


「そんなの、答えるまでもない」


そう答えて笑ってくれた。それだけで充分だと思った。



その後、今日のステージの感想等を言い合いながら途中まで一緒に帰った。



彼とステージに立つことはもうないけれど、私は今日という日の思い出を一生忘れることはないと思う。
< 67 / 183 >

この作品をシェア

pagetop