その花が永遠に咲き続けますように
とりあえず、万が一メモをなくす前に、武入君のIDを登録しておこう。
そう思い、メモを机の上に置いた状態で携帯を探していたその時だった。



「ねえ」


またしても背後から声を掛けられる。今度は女子。
振り返ってみると、それは白山さんだった。

……何だか怖い顔をしている。まあ、この人が私に話し掛けてくる時は大体こういう顔か。


「……何?」

「今、大輝から何もらったの?」

「え? あっ」

突然の質問に私が戸惑っている隙に、白山さんは机の上のメモを奪い取る。そして。


「やっぱり連絡先のID……! 何で……⁉︎」


何でと言っても、連絡先がわからなければバンドの今後についてなかなか決められないから教えてもらったというだけなのだけれど……私がそれを言う前に白山さんは、


「何で……昔から歌の上手い子ばっかり……!」


と、謎の独り言を呟く。


歌の上手い子ばっかり?

どういうことなのか聞く前に、彼女は教室を飛び出すように廊下へ出て行った。


……何だったんだ?


思わず首を傾げるのと同時に、あることに気付く。


武入君からもらったメモがない! 白山さんが持って行っちゃったんだ!


メモをなくしたからもう一度連絡先教えてとは言い辛い……それに……



さっき謎の言葉を呟いていた白山さん、何故か泣きそうな顔をしていた。



その顔が頭から離れなくて、言葉の意味も併せて気になってしまった。


私も、すぐに教室を出て彼女が去っていった方を追い掛けた。
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