その花が永遠に咲き続けますように
白山さんが走っていった方向へ向かうと、彼女の後ろ姿が一階へ下りていくのを発見した。俯きがちに歩いていた彼女は、私が「白山さん、待って」と声を掛けると、ハッとした様に一瞬こちらに振り返り、すぐに再び走り出す。


もちろん、私はそれを追い掛ける。

足は私の方が早かったみたいで、後ろから彼女の手首を捕まえることが出来た。


「ちょっ、離してよ!」

「じゃあメモ返して」

多分はたから見たら穏やかではない状況だけれど、幸い辺りに人の気配はない。


「……わかったわよ!」

観念したかのように、私の胸にメモを押し付けてくる白山さんだけれど……彼女のその表情はやっぱり今にも泣き出しそうで……。



「……何で、そんな顔してるの?」

「かっ、関係ないでしょ⁉︎ いいからさっさと大輝に連絡すれば⁉︎ どうせこれからデートとかするんでしょ⁉︎」

「……は?」

デートって。何の話だ。


訳がわからなすぎて、あまりに間抜けな顔をしてしまっていたかもしれない。そんな私の様子を見て、白山さんも「……違うの?」と聞いてくる。


「デートなんてしないよ。武入君とはそんな関係じゃないし……」

「でもそれ、大輝の連絡先でしょ?」

「それはそうだけど、一緒にバンドやろうって誘ってもらって、それの打ち合わせとかする為に教えてもらった連絡先だよ」
< 75 / 183 >

この作品をシェア

pagetop