その花が永遠に咲き続けますように
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翌日も、教室内はいつもと変わらない。

いつもと変わらず賑やかで、いつもと変わらず私は誰とも関わらない。


……つい、昨日の男の子が同じクラスにいるかどうか確認してしまったことは否定出来ないけれど。
同じクラスにはいないみたいだ。学年すら違うかもしれない。



二時限目の授業が終わり、次の移動教室の準備をしていると、


「ねぇ、良かったら次の移動教室、うちらのグループと一緒に行かない?」


と、知らない女子に話し掛けられた。その子の後ろには、女子が四人、横に並んで私を見ていた。



「……行かない」

そうとだけ答え、私は一人で教室を出て行こうとする。


だけど、今声を掛けてきた女子に

「……ちょっと待ちなよ」

と呼び止められる。

声色からして、彼女の機嫌が悪くなっているのは察した。
振り返ると案の定、眉間に皺を寄せて不機嫌そうな表情をした彼女が、ツカツカと私に詰め寄る。


「あんたさぁ、その態度なんなの?」

彼女は、睫毛の長い切れ長の瞳で私を睨み付けながら、鋭い口調でそう言ってくる。



…….私だって、自分の態度が悪いという自覚はあるけれど……



「こっちが気遣って話し掛けてやってんのに、何その態度! 入学してから誰に対してもそうじゃん!」


そんな風に言われたら、こっちもイラッとしてしまう。



「別に、話し掛けてなんてお願いしてない……」

「はぁ⁉︎ 何様のつもりだよあんた!」

彼女の怒鳴り声に反応して教室が不穏な空気を纏い始めたのと同時に、後ろにいた女子達が「もういいよ、瑠夏(るか)」「放っておこうよ、そんな子」と止めに入ってくる。


瑠夏と呼ばれたその子が納得したのかどうかはわからないけれど、彼女達は纏まって教室から出て行った。


……もし、さっきの誘いに対して素直に『うん、一緒に行きたい』と答えていたら、私の中で何かが良い方向に大きく変わった可能性もある。

でも、それは可能性。期待した分だけ大きく傷付く可能性だってある。

結局傷付くくらいなら、最初から一人でいようと思う。


だから……



昨日の男の子のことも忘れようと思う。
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