その花が永遠に咲き続けますように
そう思ったのに。
「お、今日も発見」
……昨日と同じ時間に帰宅していたら、昨日と同じ場所で昨日と同じ人に会ってしまった。
彼は今日も、石垣の上で数匹の猫と戯れている。もしかして飼い猫なのかと思ったけれど、「俺、猫好きなんだけど、いつも何故か猫の方から寄ってくるんだよね」と言われる。
それは凄い……と感心しかけたけれど、いやいやそんなことはどうでもいい。今日は無視して帰ろう……
と思ったのに、
「今日は歌わないの?」
「う、歌わないっ」
……無視するはずだったのに、つい反応して言い返してしまった。
やっぱり、どうしたって彼のペースに巻き込まれてしまう。
……帰ろう! 無視が出来ないなら、今日は用事があるとかなんとか嘘を吐いたっていい。今日はこの人に関わらないようにしよう。
そう心に決めた直後。
「そうだ。昨日教えてもらったrowdyのCD、家で発見したんだ」
彼が鞄の中から取り出して私に見せてくれたのは、紛れもなくrowdyのCDが三枚。
それも、今は入手困難な限定生産版。発売したのは私が小学生の頃だったから、お小遣いではなかなか買えず、私も持っていない。
「そっ、それ、あなたのもの⁉︎」
「いや、俺の父さんのもの。うち、家族全員が音楽好きで、洋楽のCDとかも結構たくさん家にあるんだ。だからもしかしてと思って昨日探してみた。その反応からして、もしかしてこのCD持ってない? いいよ、聴く?」
「えっ……」
誰とも関わらない、って決めたばかりだ。たまたま音楽の趣味が一致して、たまたま話しやすい存在っていうだけで、きっと楽しく感じているのは今だけ。
いつか訪れるかもしれない〝あの頃のような痛み〟から自分を守るために、この人とも距離を置かなければいけない。
「悪いけど、私は帰ーー」
「はい、決まり! 聴かせてやるからこっち来なよ!」
石垣の上からひらりと降りてきたかと思ったその直後に腕を掴まれ、そのままグイグイと引っ張られる。
「ちょ、ちょっと⁉︎」
「はい、ここ座って」
再びさっきの場所に腰掛けた彼に、私も隣に座るように指示される。
彼は、他人を自分のペースに巻き込む天才かもしれない。