珈琲プリンスと苦い恋の始まり
振り返ると背の高い彼がバツの悪そうな顔をしていて、その手で自分の口元を隠してた。


「ごめん。なんか君が消えてしまいそうに見えたから」


変だよな…と言い訳をして、済まなかった…と謝った。


「別に痴漢的な意味で止めようとした訳じゃないんだ」


本当に消え入りそうに見えただけ、ともう一度言う。
私はその言葉に唇を噛み、いっそ消えられたら楽なのに…と思った。



「…あっ!」


背中を向けると一気に走って坂を下る。
そんな私に彼は大きな声を張り上げた。


「気をつけろよ!」


怒鳴るように伝え、「また来いよ!」と続けた。



私はその声を聞きながら泣いてた。

人に愛されるように…と名付けてくれた父のことを思い出して、胸が痛くて仕方なかった___。


< 101 / 279 >

この作品をシェア

pagetop